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エコノ探偵団

東京へ人口集中 何が問題?

2014/4/1 日本経済新聞 プラスワン

■女性働きづらい環境に

そこで経済産業研究所副所長の森川正之さん(54)に尋ねると「人口が過度に集中すると問題が出てきます」と説明した。例えば神奈川県や千葉県など都市部周辺では25~44歳の女性の労働力率が相対的に低い。「出産後、子どもを保育園などに預けて働く人には長い通勤時間は障害です」。地域の保育園では送り迎えが間に合わず、勤務先に託児所があっても子どもと通勤するのは難しく、結局退職していくという。

人々の働き方に詳しい東レ経営研究所の渥美由喜さん(46)にも聞くと、「同じ企業内でも、社員の勤務地によって産む子どもの数は都市部と地方で明らかに差があります」と指摘した。人口集中は待機児童問題をさらに深刻化させ、都心に住む女性も仕事を辞めていく可能性が高い。

「これからは東京も高齢化が問題となりますよ」と話すのは、元総務相で野村総合研究所顧問を務める増田寛也さん(62)。「若年世代の人口流入は多いが、出生率が低い中では高齢者の割合は急速に上がってしまいます」

国交省の試算では、東京圏の高齢者比率(65歳以上)は、10年の20.5%から60年に40.0%まで上昇する。増田さんは「介護など社会福祉分野の人材をどう確保するかが課題です」と指摘し、さらに「首都直下地震の危険があり、人口集中で災害への弱さも増します」と話した。

ミュンヘン再保険会社の「自然災害リスク指数」はニューヨーク(42)、ロンドン(30)などに比べて、東京・横浜は710と突出して高い。同指数の高さは大震災で首都が被災し、日本全体が機能しなくなるリスクが高いことを意味している。

「今後も東京への人口集中が続くのかしら」。三菱UFJリサーチ&コンサルティング研究員の木下祐輔さん(30)に尋ねると「東京は人口、政治、金融など様々な面で、世界でも例を見ないほど集中が進んでいるのです。20年の東京五輪に向けて加速する可能性もあります」と答えた。

人口集積は人やモノの移動・輸送効率を高め、生産性向上につながる。ところが海外と比べると東京の生産性は低い。英プライスウォーターハウスクーパースの「世界の都市力比較」で東京の経済の実力は27カ国中10位。そのうち生産性は11位。地価や物価の高さが集積効果を発揮できていない理由とされる。

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