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ウォルト・ディズニーの約束 映画「ポピンズ」裏側のドラマ

2014/3/29 日本経済新聞 夕刊

 ウォルト・ディズニーが直接に指揮をとった最後の映画であり、興行的にも、評価の面でも(アカデミー賞13部門にノミネート、5部門受賞)最大の成功をおさめたミュージカル「メリー・ポピンズ」(1964年)。その製作のうらのドラマ。

 原作者P・L・トラヴァース(エマ・トンプソン)とウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)との映画化をめぐる攻防である。

 原作は1934年にイギリスで出版され、ディズニーは40年代にはすでに映画化をかんがえ、交渉をはじめていたようだが、この映画は、61年からはじまる。

 トラヴァースは、作品が売れず、経済的ピンチにあり、いやがっていた映画化の交渉をディズニーと直接することになる。ロンドンからロサンゼルスへ。

 自分の意にそわない映画になるようだったら、断固映画化を拒否するという姿勢で、ディズニーと脚本家、音楽のシャーマン兄弟に、きびしくダメ出しをする。なんとも非協力的で狷介(けんかい)な態度に、ディズニーたちは困惑。

 撮影所にかよう日々と並行してトラヴァースの子ども時代の回想が、はいってくる。20世紀初頭のオーストラリア。銀行員だった父(コリン・ファレル)は娘に愛情をそそいだが、一方で酒におぼれ、転落していく……。

 自分の生いたちが投影された作品だったからこそ、彼女は、映画化によってその世界をこわされたくなかったのだ。

 しんぼうづよく、それを理解したディズニーは、彼女に歩みよっていく。

 過去のトラウマが小出しにされていくあたりは単調だが、「メリー・ポピンズ」製作・完成に近づいていくと、やはりこころおどる。特に、名曲の数々が生み出されていくところ。

 監督は「しあわせの隠れ場所」のジョン・リー・ハンコック。2時間6分。

★★★

(映画評論家 宇田川 幸洋)

[日本経済新聞夕刊2014年3月28日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

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