ロボ手術・放射線…前立腺がん治療、選択肢広がる日経実力病院調査2013

男性特有のがんである前立腺がんは、高齢化や食習慣の欧米化により増加傾向にあり、2020年には男性の罹患(りかん)数が肺がんに次いで2番目になると予想されている。一方、進行は比較的遅く、患者の年齢や持病などを考慮して治療法を選ぶ必要がある。日本経済新聞社の「実力病院調査」によると、症例数が多い病院ではロボットを使った手術が広がる一方、開腹手術や放射線治療など選択肢を幅広くそろえていた。

前立腺がん全体の症例数が572例と全国有数の東京医大病院(東京・新宿)。06年に日本で初めて手術支援ロボット「ダヴィンチ」による前立腺全摘手術を始め、実績は1100例以上に達する。昨年1年間に実施した全摘手術計336例のうち、開腹手術はわずか3例だ。

手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使った前立腺がんの手術(東京都新宿区の東京医大病院)

ダヴィンチは腹部に開けた小さな穴から内視鏡カメラとアームを挿入し、医師がモニターを見ながら遠隔操作で動かす。従来の腹腔(ふくくう)鏡画面より精密に患部を観察できる。医師の手の動きはコンピューターを通じて忠実にロボット先端に伝わる。泌尿器科学教室の橘政昭主任教授は「執刀医と助手が手術の場面を共有でき、ノウハウをその場で伝授できる」と教育的効果も強調する。

「開腹手術に比べ極めて少ない出血量で手術を終えられる」(橘主任教授)のも利点という。同病院では貧血などに備え、手術前に患者の血液400ccを確保しておくが、8割以上は使わずに済んでいる。

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ダヴィンチは12年に前立腺がん全摘手術に保険適用され、導入施設は今年1月時点で国内の148施設に広がった。千葉県がんセンター(千葉市)は現在、8人の泌尿器科の医師全員がダヴィンチの操作技術を身につけており、前立腺がんの手術に占める使用率は7割に上る。

ただ、ダヴィンチ手術は患者の体を頭部を下にして傾ける必要がある。手術中に頭部に血液が偏るため、脳や目の病気にかかったことのある人には使えない。

このため、同病院では標準治療の医療機器はすべてそろえる。コンピューター断層撮影装置(CT)の画像を基に、がんの形に合わせて正確に放射線を照射する「IMRT(強度変調放射線治療)」機器を活用した治療実績は年間100例超。早期発見のがんに対しては、前立腺に線源を埋め込んで内部から放射線を当てる「小線源療法」なども用意している。

治療方針は「3科合同カンファレンス」と呼ぶ会議を毎週開いて決める。泌尿器科と放射線治療部、画像診断部の3組織から12人のメンバーが参加し、毎回10~20人の新規患者について議論。4000人の前立腺がん患者のデータベースを駆使し、「最適な治療法を選ぶ仕組みを確立した」(植田健医療局長)という。