手帳、写真やシールで「思い出日記」に
何気ない日常を記録
思い出書いて充実日記
開かれたページにはイラストや写真がびっしり。「きょうは久しぶりのバタートースト」「今年のおみくじの結果は……」。デザイナーの吉開富美さん(32)は9年前から手帳に毎日の出来事を書いている。
以前勤めていた会社の上司から「1日ひと言でも手帳に書けば、次の年に見返すと楽しくなるよ」というアドバイスを受けたのがきっかけ。次第に文字だけでは物足りなくなり、時には1時間をかける大作を書くようになった。内表紙に貼った愛猫の写真がお気に入りだ。
日記帳と違い、スケジュール管理にも役立つ手帳は移動中も持ち運べる。ランチの後や、パソコンを起動する途中などの時間を使って書けるのが魅力という。
就職や結婚などの出来事は記憶に強く残る。しかし、当たり前の日常を思い出すのは意外と難しい。「その時々の自分が何を思っていたのかを残していきたい」と語る。
書店などには4月始まりの手帳が並びだした。種類が豊富で、何を選べばよいか迷う人もいるだろう。日本能率協会マネジメントセンター(東京・港)の矢野真弓さんは「まず使い方を決めてから選びましょう」とアドバイスする。
イラストや写真をふんだんに盛り込むなら、1日分が1ページあるタイプ。簡潔に文字中心で記したいなら1週間分で1ページのタイプや、文字の書きやすいケイ線が引かれたもの。ダイエットで体重の変化を記録したいだけなら、月間カレンダーがあるだけで十分だ。
自分にあった一冊を見つけたら、なるべく長続きさせたい。「ほぼ日手帳」を企画する鶴見さくらさんは「特に何もなかった日でも、書くことができるテーマを1つ決めましょう」と話す。
例えば朝ご飯のレシピや天気。その日の気分にあったシールを貼るだけでもよいという。
「お気に入りのペンを見つけるのも有効」(鶴見さん)という。表紙をシールやマスキングテープでデコレーションするなど、手帳を持つ楽しみを増やすことも重要だ。
毎日書こうと頑張らないことも大切。吉開さんは昔の手帳に空白が続いた部分を見て「あの頃は忙しかったな」などと思い出すことがあるという。空白であることも情報の一つと割り切ると、少し気楽になるだろう。
「今日やること」一目で
仕事の管理に勉強やダイエットの計画。手帳に書き記すことで進行度が一目で把握でき、効率的に時間を使うことができる。
映画配給会社で働く所恵美さん(34)は毎朝30分、デスクでA5サイズの手帳に向かう。今日の仕事に、昨日やり残した課題と部下の予定を書き足す。日中は片時も手帳を離さず、終わった仕事には黄色のラインマーカーでチェックを入れる。
「仕事の漏れが無くなった。今何をすべきか分かるので無駄な時間も減った」と喜ぶ。ページのレイアウトは自分で決められ、思いついたことをすぐ書き足すことができる。考えやアイデアを整理するための手段として手帳が見直されている。
勉強の進行度やダイエットによる体重変化なども書いて記せば、努力の積み重ねを実感しやすい。
日本能率協会マネジメントセンターが2014年のスケジュール管理に何を使うか尋ねたところ、手帳などのアナログ手段とスマホなどのデジタル手段を併用する人は56.6%と前年に比べ21.8%増えた。手書きの魅力が見直されている。
(武田健太郎)
[日経プラスワン2014年3月8日付]
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