■道具過信は禁物

伝統的なヨガでは補助は使わず、立った状態から体を曲げるのが普通だが、初心者はバランスを崩すのを恐れ、無意識のうちに曲げ方が小さくなりがちだ。イスで体を安定させておけば、曲げられる範囲は自然と大きくなる。適当な高さのイスがない時は壁に手を当てて支えにしてもいい。

岡部さんは「初心者が1人でヨガのポーズをまねても上手にできず、かえってストレスをためかねない。体力に自信がある人であっても、最初は補助具を積極的に使う方がいい」と指摘する。

イスは体勢を安定させるほかにも使い道が多いという。例えば、イスに浅めに座って両手を後に回して背もたれをつかみ、息を吸いながら胸をぐっと押し開ける。前かがみ姿勢でいると小さく縮こまりがちな胸が大きく開き、深く呼吸してしっかりと空気を取り入れる動きになる。この場合は、イスの背もたれ自体がポーズを矯正する軸のように働いている。

ただし、補助道具の有無にかかわらず、自分でマッサージやヨガをする時は、痛みや苦しさを感じない範囲にとどめるのが鉄則だ。道具を過信して無理をするのは避けよう。

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無理なく習慣にする効果も

道具を使ったマッサージやヨガは、正しい動作を簡単に繰り返せるようになるだけでなく、無理なく習慣にしやすくする効果もある。

ボディデザイナーの森さんは「『ボールを見たらマッサージ』など自分なりのルールを決め、よく目に付くところに道具を置くといい」と助言する。自宅ならリビングのテレビ前、会社ならデスクの上にテニスボールやすりこぎをまとめておくと忘れにくくなる。ひどくなる前にほぐす習慣がつけばしめたもの。

ルナワークスの岡部さんは「イスや壁に身を委ねるという安心感が心身をリラックスする良いきっかけになる」とみる。疲れをとるにはまず体の緊張を解く必要があるが、いざ筋肉を緩めることを意識し始めるとそれが上手にできない人も多い。イスや壁に体重を預けると、無意識にかなりの緊張が解けるという。

深刻な疲れを感じる人ほど、普段の生活で頑張り過ぎている傾向がある。「道具に頼っていいと考えることがリフレッシュへの第一歩」(岡部さん)と言えそうだ。

(堀大介)

[日経プラスワン2014年3月8日付]

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