発達障害ADHDでも… 仕事や生活に支障なく成人の症状診断進む

人の話をしっかり聞かず、忘れっぽくて、計画的に物事を進められない。こんな理由で職場などで叱られた経験のある人は多いだろう。最近の研究でこうしたケースが発達障害の一つ、「注意欠陥多動性障害(ADHD)」に該当する可能性があると分かってきた。受診する人も増えている。ただ典型的な症状があっても仕事や日常生活に支障を及ぼさないよう工夫できる。専門家は「あまり落ち込まないで」と話す。

昭和大学付属烏山病院を訪れた20代女性は菓子店で3年近く販売員を務めていたが、注文と違う商品を出したり値段を間違えたりするミスが止まらない。店長から叱責され精神的にも参っていたという。不注意や集中力の欠如が明らかで岩波明・同大医学部教授はADHDと診断した。

■「小児」に限らず

ADHDは注意力や覚醒機能を調整している脳内の神経伝達物質、ノルアドレナリンの働きに障害があることなどが原因と考えられる。注意力を持続できない、気が散りやすい、物をよくなくすなどの「注意欠陥」、落ち着きがなくしゃべりすぎる、思いたったら後先考えずに行動する、といった「多動性」や「衝動性」が特徴とされる。

医師が診断のよりどころとするのは世界保健機関(WHO)の指針や、米国精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引(DSM)」だ。同学会は昨年5月に最新版「DSM―5」を発行し、日本語版も近く出る予定だ。

ADHDは主に小児の症状と考えられていたが、最近は思春期以降に「実はADHDだった」と分かるケースも増えてきた。こうした現状に合わせ、DSM―5では成人の症状の説明などを詳しくした。従来は7歳未満の症状からADHDかどうかを判断していたのを、12歳未満に引き上げたのが大きな改正点だ。また、17歳以上ではこれまでよりもやや緩い基準でADHDと診断するよう改めた。

「成人になって突然、発症することはないので、子どもの頃の状態を詳しく聞き取るのが正しい診断の決めてになる」と東京大学大学院医学系研究科准教授で付属病院こころの発達診療部の金生由紀子部長は指摘する。小中学校の通知表や作文、絵画や習字の作品などが参考になる。

同病院は18歳以上を対象に発達障害検査入院プログラムを2011年度から実施している。10日~2週間の入院期間中に知能検査、診断面接、神経心理検査など約15種類の検査をする。母子手帳や通知表、卒業文集なども提出してもらう。ADHDなどと診断された場合は同病院で治療するか、患者の居住地に近い医療機関に引き継ぐ。検査に長時間かかるため、受け入れは月に1人に限っている。

■プラス面探そう

ADHDにはどんな治療法があるのか。「患者自身が自分の状態を知り、受け入れたうえで対処することが必要」と専門家は口をそろえる。それを促す方法として、昭和大付属烏山病院は昨秋からグループ療法を始めた。「自分はもう駄目だと思いがちだが、似たような症状に悩む人たちと一緒だと対処法が見えてくる場合も多い」と同病院の精神保健福祉士兼社会福祉士、五十嵐美紀さんは指摘する。

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