戦争の日本中世史 呉座勇一著室町期、リアリズムで照らす

2014/3/6
(新潮社・1500円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

13世紀末の元寇(げんこう)から、15世紀後半におこった応仁の乱までを、この本はおいかけている。室町時代にくりひろげられた内乱を、これまでとはちがう新しい解釈で、読みきった。そこはあざやか。

 従来の歴史学は、南北朝以後の内乱を、階級闘争の舞台として位置づけた。戦国時代もふくむ内戦史を、社会変革へいたる過程として、とらえてきたのである。いわゆる悪党のことも、そんな変革のにない手として、語りやすかった。

 だが、ひとつひとつの争乱をていねいにさぐると、そうとも言いきれぬ局面が見えてくる。できれば、こんな戦いにはかかわりたくないとねがった武士も、おおぜいいた。やむをえない事情で、しぶしぶたちあがった者も、すくなくない。

 著者は、戦時のリアリズムによりそって、内乱の歴史を見なおそうとする。そして、階級闘争史観では見えにくい現実を、うきぼりにしていった。

 ただ、室町期の内乱が、社会をかえたことも否定はしにくい。個々の小状況を説明できない社会変革論も、長期的な展望にたてば、一定の説得力をもつ。今後の著者には、大小両状況の橋わたしとなる読みときも、もとめたい。

★★★★

(風俗史家 井上章一)

[日本経済新聞夕刊2014年3月5日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

戦争の日本中世史: 「下剋上」は本当にあったのか (新潮選書)

著者:呉座 勇一
出版:新潮社
価格:1,575円(税込み)

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