このため、複数の出動要請に応えようと、複数機が運航する自治体が増加。北海道(3機)、青森、千葉、静岡、長野、兵庫(2機)の6道県に上る。要請が重なった場合でも別のヘリで対応できるため、救命率が高くなる。

■費用負担が課題

一方、依然として11都府県が導入していない。その1つである東京都は消防ヘリ7機を所有。医療機器を積載し、医師が同乗することもあるため、「現状で対応できている」と話す。また、福井県は「ヘリ運航に対応するための救命救急医らの不足や高額な費用負担が課題」という。

NPO法人救急ヘリ病院ネットワーク(東京)の篠田伸夫理事長(70)は「現在は県内や地域レベルでの限定的な範囲での活動であり、各都道府県でヘリを複数機導入して、どの地域の要請にも対応できる体制が理想的」と指摘する。

11年3月に発生した東日本大震災では、18機のヘリが全国から被災地に集まったものの、患者が既に搬送されていたり、複数のヘリが重複して到着するなどの事態に直面。低い認知度や消防ヘリなどとの連携不足が浮き彫りになった。今後、想定される首都直下型地震や東海地震など大規模災害に備えるには、さらなる普及を求める声も少なくない。

篠田理事長は「隣県同士での連携した運航は平時だけでなく、大規模災害でも有効。全国でドクターヘリを一体的に運用できるシステムを作るなど活躍の場を広げるべき」と提言している。

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国の補助で連携後押し 「救急車より27分短縮」死亡率39%減

厚生労働省の研究班の調査によると、ドクターヘリを要請してから医師が治療を開始するまでの時間は平均14分で、救急車の搬送と比べて約27分短縮された。またドクターヘリで搬送された患者が救急車で搬送されたと仮定した場合と比較して、ヘリの搬送によって患者の死亡を39%、重傷・後遺症を13%減らす効果があると推計している。

ドクターヘリの運航を普及させるため、厚生労働省は来年度予算案に今年度より約4億円多い約49億円を計上した。来年度運航予定の45機の活動に必要な人件費や燃料費などを補助する。同省は幅広い地域でヘリを要請できるよう、「ヘリを導入した都道府県を中心に、近県と協力して運航するなど地域での広域連携を進めてほしい」としている。

(塩崎健太郎)

ドクターヘリ 法改正重ね柔軟な運用が可能に
医師や看護師が乗り込み、医療機器や医薬品を積み込んで患者のもとに急行する救急医療用ヘリコプター。日本国内では2001年、川崎医科大病院(岡山県)、日本医科大千葉北総病院(千葉県)、聖隷三方原病院(静岡県)の3県で導入された。1機当たり約2億円の費用がかかる。
07年にドクターヘリ特別措置法の成立で、費用の半額ずつを国と地方自治体で折半。さらに国の特別交付税で5~8割の補助を受けられるようになったことから、自治体の財政負担が減り、急速に配備が進んだ。
これまでは法律で原則、消防機関などの依頼または通報がなければ、空港や飛行場以外で離着陸できなかった。しかし、大規模災害の発生時に救急搬送活動などを迅速にできるようにするため、昨年11月の法令改正で、公園や学校などでの離着陸も可能となった。

[日本経済新聞夕刊2014年2月27日付]

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