気軽なギフト、SNSで 住所知らなくてもOK
「今日は仕事を手伝ってくれてありがとう!」。午後8時、帰りの電車内。横浜市に住む女性会社員(30)は同僚に「スターバックスコーヒー」のギフトカードにメッセージを添え、SNS上で送付した。ソーシャルギフトは「ちょっとした感謝の気持ちを伝えたい時に使いやすい」と話す。
店頭で画面提示
スターバックスコーヒージャパンは1月から、ネット上で友人らにギフトカードを送付できる新たなサービスを開始した。「スターバックス e―ギフト」はメールのほか、SNSの「フェイスブック」や「LINE」のメッセージ機能を通じてギフトカードを送る仕組みだ。
ギフトの内容は全国の店舗で使用できる500円分のドリンク券だ。カードは15種類以上の絵柄をそろえたほか、自由に文章を書き込めるようにした。
贈る側は500円をクレジットカードなどで決済する。受け取った側は店頭でギフトカードを写した画面を提示すれば、500円以内で好きなドリンクを注文できる。
キリンビールはセブン&アイ・ホールディングスなどと組み、SNS上の知り合いにビールを贈るサービスを展開している。利用者は専用サイト「ビア・トゥー・フレンズ」で贈り先を選択。クレジットカードで決済すると、贈り先に引換券が届く。その引換券をセブンイレブンで提示すればビールをもらえる。相手の住所が分からなくてもプレゼントできる点が人気を集めているという。
大丸松坂屋百貨店は、フェイスブックを経由して贈り物ができるサービス「okurune」を運営する。ファッション小物やインテリア・雑貨などを用意した。2万円弱のアロマディフューザー(芳香拡散器)など、値の張る商品もそろえているのが特徴だ。
仲間と協力し、1人当たりの負担額を抑えるソーシャルギフトも登場した。花キューピット協同組合(東京・品川)のグループ会社が運営する「bouquet(ブーケ)」は、発起人が贈りたい花束(525円)を選択。共通の知人などに共同プレゼントをフェイスブック上で呼びかける。
賛同者は発起人と同様にブーケを注文し、合計8つ以上の花束が集まるとギフトが成立する。「多くの賛同者を集めれば大きな花束が作れる」(同社)という。ブーケは指定した日時に指定した場所に届けられる。賛同者のメッセージを集めた寄せ書きもフェイスブックを通じて相手に贈られる。
人間関係を円滑に
矢野経済研究所(東京・中野)によると、縮小傾向にあったギフト市場は2011年度、12年度とも前年度比でプラスだった。伝統的な中元や歳暮などの需要が伸び悩む一方、友人の間で気軽にギフトを贈り合う習慣が広がっているためだ。
若い世代を中心に友人らと円滑に付き合いたいという思いが強まっているという。11年3月に発生した東日本大震災をきっかけに、人のつながりを大切にする意識が強まったことも影響しているとみられる。
特にソーシャルギフトと呼ばれる分野はSNSの利用者が増えるのに伴い急成長している。野村総合研究所は、SNSを活用してギフトを贈る消費の市場規模は1600億円(12年度)と推計する。
ソーシャルギフトは贈られた側が商品を受け取るために店舗まで出向くケースが多く、ネットとリアルを融合する「O2O(オンライン・ツー・オフライン)」の施策として有望とみる企業も多い。対応サービスが広がれば市場はさらに拡大する可能性がありそうだ。
(消費産業部 小川悠介)
[日本経済新聞夕刊2014年2月13日付]
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