歌舞伎座2月公演41年ぶり演目、新世代が健闘

歌舞伎座は新開場以来3回目の花形歌舞伎。満41歳になったばかりの染五郎を年長者とする次代を担う面々の一座で、鶴屋南北と河竹黙阿弥の長編を昼夜に分けて通し上演するという企画も意欲的だ。

わけても文化7年(1810年)初演の南北作「心謎解色糸(こころのなぞとけたいろいと)」は明治以降の上演も少なく、1973年国立劇場の復活後も上演のない難物だ。さぞかし七面倒くさい芝居になるかと案じたが、複雑な筋を簡潔にさばいた脚本の整理・補綴(ほてつ)、意欲あふれる俳優たちの健闘によって、現代の観客にも十分手応えのある復活上演となった。さらに細部を整理すれば新世代歌舞伎のレパートリーとなり得る。前世代の大物俳優たちによる41年前の上演より孫世代による今回の方がはるかにビビッドであるのは間違いない。

染五郎がいなせな職人の左七と、ならず者の九郎兵衛の二役を兼ねるのは原作にない設定で、左七は適役、九郎兵衛はやや線が細いが努力でカバー。松緑の本庄綱五郎がその穴を埋める大殊勲。菊之助の小糸、七之助のお房・お時の二役は今日他にまね手はなかろう。玉太郎の丁稚・与茂吉が敢闘賞もの。ベテラン勢では歌六の安野屋十兵衛が水際立った実事師ぶり。

夜の部は「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)」、通称「白浪五人男」の通し上演。前段の時代物風の極彩色の場面は久しぶり、花形連で全段通すのは初めてだろう。この部分がやや重量不足。赤星十三郎のくだりなど台本にもカットがある。

何と言っても菊之助の弁天小僧が生気はつらつ。とりわけ極楽寺山門の捕り手との立ち回りは飛燕(ひえん)のごとき生動感が魅力。松緑の南郷は良き相棒、染五郎の日本駄右衛門は役違いだが、よく工夫して勤めている。亀三郎の忠信利平、七之助の赤星は将来の持ち役だろう。25日まで。

(演劇評論家 上村 以和於)