乳がんタイプ別に最適治療法 術前検査の精度向上日経実力病院調査2013

年間約6万人が新たに発症する乳がん。日本経済新聞社が公開データを基にした「日経実力病院調査」では、がんのタイプに合わせた効果的な治療法を選択する病院が目立った。乳がんは日本人女性の16人に1人がかかるといわれており、早期発見、早期治療が生存率を高めていく。手術前の検査の精度の向上などは、転移の有無の正確な把握や最善となる治療法の選択などにも役立っている。

検査精度の向上背景に

手術数が1167件と全国で最も多かったがん研有明病院(東京・江東)。乳がんの手術で乳房の切除をがん周辺にとどめる「乳房温存術」が2006年まで約7割を占めた。その後、乳房をすべて切除する全摘術が増加。12年にはほぼ同数に。乳腺センター長の岩瀬拓士医師は「全摘術と併せて行う乳房の再建術が進歩した」と説明する。

全摘術は再発リスクが低下。さらに再建術は人体の一部を移植する手法に加え、人工物(インプラント)を入れる手術の一部に昨年7月から、公的保険が適用されるようになったことも全摘術を後押ししている。

乳がんのタイプは主に2つ。女性ホルモンの影響を受けて大きくなり、進行が比較的遅い乳がんの場合、手術をした上で薬物療法に移るのが一般的だ。腫瘍が小さければ温存術を、大きい場合は全摘術と再建術を組み合わせた手術を行うことが多い。術後は放射線治療を行う。進行が早いタイプではホルモンの薬が効きにくく、術前に抗がん剤など投薬治療を行う傾向が強い。投薬効果に応じて、温存術と全摘術を選択する。

また、転移が早い乳がんの中でも、がん細胞の表面で増殖を促すたんぱく質があるタイプは、腫瘍が2センチメートル以下と小さくてもリスクが高く、手術前後に抗がん剤と分子標的薬「ハーセプチン」を使う。

手術前には乳がんの転移などの情報を医師や看護師で共有し、最適な治療法を検討する(川崎市の聖マリアンナ医科大学病院)

乳がんの転移の有無を調べる検査も進歩している。代表例は「センチネルリンパ節生検」だ。手術時にがん細胞がたどり着くリンパ節を調べる。転移がなければ、ほかのリンパ節を残せるため、患者の負担を軽減できる。岩瀬医師は「遺伝子の研究が進み、がんの個性に合わせ対処法を考える個別化医療が進んでいる。進行の早さなどを予測して手術や薬物療法を行えるようになってきた」と話す。

一方、手術で温存術が約6割を占めるのは、聖マリアンナ医科大学病院(川崎市)だ。ピークの07年の73%からは減少しているとはいえ、乳腺・内分泌外科の津川浩一郎医師は「全摘術より身体への負担が少ないため、検査で腫瘍が3センチメートル以下を目安に、乳房温存が可能と判断される患者には温存術を標準治療として提案する」と説明する。

温存術は切り取る範囲を正確に決めるため、検査精度の高さは不可欠。09年、乳がんなどの乳腺疾患に特化した「ブレスト&イメージングセンター」(同市)を開設。高精度のMRI(磁気共鳴画像装置)などの画像診断装置を備え、「画像診断の限界とされていた5ミリメートル以下の腫瘍も発見しやすい」(津川医師)。