アート&レビュー

アート

大浮世絵展 庶民芸術の大河を見通す

2014/1/29 日本経済新聞 朝刊

ひと言に浮世絵と言っても、200年を優に超える歴史があり、その世界はきわめて豊穣(ほうじょう)だ。東京・両国の江戸東京博物館で開催中の「大浮世絵展」は、浮世絵の大きな流れを、時代時代の名作でたどる企画である。

時代に沿って著名な絵師ごとに名作を並べる展示は、オーソドックスだが、この正攻法を究めるのは、下手なテーマ展示よりもよほど難しい。何より、18世紀の錦絵(多色摺(ずり)木版画)の名作には、海外の美術館やコレクターの手の元にある作品が多いからだ。

今展は海外の5つの美術館、博物館の協力を得て、この課題をクリアしようとした。会場は、近世初期風俗画を紹介するコーナーを皮切りに、年代順に6章に分ける構成。約2カ月の会期に、合わせて約340点を紹介するが、作品保護などのため会期中にたびたび展示替えがあり、一度に展示されるのは、140点前後である。

充実した印象があるのは、天明期(1781~89年)の錦絵の黄金時代に、美人画で一世を風靡した鳥居清長である。国内ではなかなか見られない代表作「吾妻橋下の涼船」や「美南見(みなみ)十二候 六月」は、シカゴ美術館所蔵の優品が展示され、「天明のヴィーナス」とも称されるのびやかな美人群像に出合う貴重な機会といっていい。

また、錦絵初期を飾る鈴木春信の名作「雪中相合傘」は、大英博物館から出展されている。喜多川歌麿の大首絵の代表作がやや少ないなど、多少の凹凸はあるものの、17世紀の黎明(れいめい)期から近代に至る二百数十年の盛衰を見通す意図は貫かれている。人々の夢や憧れ、心意気を映した庶民芸術の大河のような流れは、見えてくる。3月2日まで。名古屋市博物館、山口県立美術館に巡回。

(編集委員 宮川匡司)

アート&レビュー 新着記事

ALL CHANNEL