膵臓がん手術、最小限切除で患者の負担軽減日経実力病院調査2013

毎年2万8千人以上が死亡する膵臓(すいぞう)がん。診断と治療が難しく、部位別では肺、胃などに次ぎ、5番目に亡くなる人が多い。日本経済新聞社が公開データを基にした「日経実力病院調査」では、放射線照射や抗がん剤の組み合わせに加え、栄養管理を徹底して治療効果を高めていたほか、患者の負担を減らす方法でがんを切除する病院が目立った。早期発見や治療法の研究も進んでいる。

栄養管理で体力保つ

膵臓がんの手術をする名古屋大病院の藤井講師(中)

膵臓は胃の後ろにある長さ約20センチメートルの細長い臓器。食物の消化を助ける消化酵素や血糖値を調整するホルモンを分泌する。胃、十二指腸、小腸、大腸、肝臓などに囲まれ、がんが発生しても見つけるのが難しい。がんが進行した状態で発見される患者が多い。

東京女子医大病院(東京・新宿)は2012年度の脾臓(ひぞう)を含む「手術あり」が全国2位の198例。がんが膵臓内部もしくは近くのリンパ節転移にとどまる状態の1~3期のほか、周囲の主要な血管を巻き込む状態の4a期のうち、広がりが比較的軽い場合は手術で切除する治療を選択している。

現在の医療で根治を目指すためにはがんの切除が必要だが、患者の8割は見つかった段階で3期~4期に進行している。消化器外科の羽鳥隆准教授は「手術が可能なのは患者全体の30~40%」と説明。手術はがんの位置によって胃や十二指腸などの一部も合わせて切除する。患者の体力を低下させないよう、できるだけ周辺臓器を残すという。

手術後は再発を防ぐため抗がん剤治療を施す。4週間毎日服用した後、2週間休むのを少なくとも半年続ける。この際に重要視するのは「栄養管理」(羽鳥准教授)だ。切除後は消化酵素の分泌が不十分になり、栄養障害に陥りやすい。抗がん剤に耐えられる体力を維持するため、患者への消化酵素薬の投与は欠かせないという。

「手術あり」が全国3番目の183例だった名古屋大病院(名古屋市)消化器外科二の藤井努講師も「周辺臓器を大きく切除すると、体力が低下して寝たきりになる患者もいる。患者の生活の質を考え、周辺臓器の切除は最小限にとどめる」と話す。例えば、膵臓近くの動脈には腸の働きを調整する神経が網の目のように巻きついており、標準的とされる神経の半分切除をやめたところ、下痢で苦しむ患者は大幅に減った。

同病院では、手術が難しい4a期の患者に対し、1カ月半の放射線と抗がん剤による治療でがんを小さくしてから切除する「術前化学放射線療法」に10年6月から取り組んでいる。藤井講師によると、がんの大きさは平均で23%縮小。術前療法後の画像診断でがんが血管に広がっていても、実際に切除するとほとんど消失している場合も多いという。約40人が術前療法後に切除を受け、2年後生存率は58%に上る。