ライフコラム

エコノ探偵団

社員旅行に運動会 企業の親睦行事、なぜ復活?

2014/1/14 日本経済新聞 プラスワン

「多くのイベントは正社員が対象のようですが、多様な働き手を巻き込むにはどうしたらいいですか」。章司の質問に、中原さんは、ノートパソコンで動画投稿サイトを示した。昨年から、日本交通やサイバーエージェントなど、様々な企業の社員や官庁の職員らがAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」に合わせて踊る動画がアップされている。社長・役員から本社や工場の社員、食堂スタッフや海外拠点など多様な参加者を登場させる企業もあり、中原さんは「一見、経営的には見えませんが、職場の多様なメンバーが『自分も参加していいんだ』と思える効果など、経営者は職場の融和効果を見込んでいると思います」と評価する。

「参加者側はどう見ているのでしょう」。章司は組織論が専門の神戸大学教授の鈴木竜太さん(42)を尋ねた。「せっかく一緒に働いているのだから、自分の仕事だけやって帰るのではなく、親しくなりたいという社会的欲求もあるでしょうね」と鈴木さん。「いわゆる失われた10年に、成果主義や、自分のキャリアは自分で築くといった個人主義的なキャリア観が広まりました。しかし、職場で助け合う文化が失われ、これでいいのかという危機感が広がっていると思います」と指摘する。

JTBモチベーションズの調査でも、社員が社内イベントに参加して良かった点として「社員全員が同じ場所に集まったこと」(53%)、「参加型で、自分たちも一緒に楽しめたこと」(37%)を挙げていた。一方、良くなかった点として「一方的に聞くだけで退屈した」(35%)という声があり、経営者側がもっとも重視する「経営トップ層が、社員に直接語りかけること」(76%)とは、すれ違いもある。「全員参加型のイベントに参加を強制したり、右向け右という風に社員を画一的に育てたりしてしまえば、一体感がマイナスに働くこともあるので、企画には工夫も必要ですね」と鈴木さん。

「今年は社内行事をやりませんか」。章司が事務所に帰って報告後、提案すると「家族同伴の温泉旅行にしましょう」と所長夫人の円子。所長は「正月休暇に行ったばかりじゃないか」と財布をのぞき込んだ。

(井上円佳)

[日経プラスワン2014年1月11日付]

ライフコラム 新着記事

ALL CHANNEL