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社員旅行に運動会 企業の親睦行事、なぜ復活?

2014/1/14 日本経済新聞 プラスワン

■個人主義広がり危機感

「スポーツイベントは盛り上がっていいですね」。章司が事務所に戻ると、「昔は社内行事と言えば社員旅行だったぞ」と所長。章司が産労総合研究所の調査を見直すと、1990年代半ばには9割近くの企業が社員旅行を実施していた。2004年には約4割まで低下したものの、09年は52%まで回復。中小企業では3分の2が実施していることがわかった。

章司が社員旅行がある企業を探すと、バンダイナムコホールディングスでは傘下の各社で2年に1回、複数のツアーから好きなコースを選んでグループ単位で参加できる旅行などを実施。リクルートキャリア(同千代田区)の場合、部門が目標を達成した年に4人以上の社員が誘い合って旅行に行くと、会社から支給金が出る仕組みがあった。

「規模が小さい会社では、全員参加の旅行が企画できるメリットがあります」。章司に話しかけてきたのは、病院などへのコンサルティングを手掛けるメディヴァ(同世田谷区)社長の大石佳能子さん。同社は、昨年9月にほぼ全社員にあたる約90人で京都への社員旅行を実施。不定期開催ながら00年の創業以来5度目。この3年で社員数が倍近くに増えたこともあり、「企業文化を共有するためもあり、そろそろやりたいという声が社員から出て実施を決めました」と大石さん。

「どうして今、企業は一体感を求めるのかな」。疑問が解けない章司は、仕事の学習論を専門とする東京大学准教授の中原淳さん(38)に尋ねると、「バブル崩壊後、長期雇用や年功序列が崩れ、一方で非正規雇用や派遣社員など職場にいる人材の多様化が一気に進みました」。厚生労働省によると、2000年代前半、大学新卒者の3年以内の離職率は3分の1を超えていた。「従来のように全員が正社員として長期で働くことを前提とする価値観を共有できず、ひずみが生じています」

景気悪化や、高齢化に伴う企業の社会保険関連費用の負担増などで、保養所や厚生施設を手放す動きもある。行事を実施する上では費用対効果を意識する企業が増えている。「単に飲食中心の社員旅行といった旧来型の福利厚生ではなく、組織の力を引き出すような企画ができないかと、企業は探っています」と中原さん。非日常的なイベントを通じて生活経験を共有することで、集団がまとまりやすくなる効果があるという。

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