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歌舞伎座1月公演 明るさと迫力 新春飾る競演

2014/1/16 日本経済新聞 夕刊

昨年末に入場者数100万人を超えた歌舞伎座の初芝居。幸四郎の「石切梶原」、吉右衛門の「松浦の太鼓」、両者に坂田藤十郎が加わった「仮名手本忠臣蔵・九段目」の3本が大顔合わせだ。

梶原は年功ゆえのゆとりから舞台の印象が明るくなったのがいい。橋之助の大庭と錦之助の俣野の敵役組も時代物役者の骨格大きく、東蔵の六郎太夫、高麗蔵の梢も手いっぱいに演じる。

11月・12月と「仮名手本忠臣蔵」上演の余波は年を越えて、まず外伝劇中の人気作「松浦の太鼓」は吉右衛門の薬籠中にますます入って、楽しさという意味では今月随一。ウェルメード劇とはかく演じるものというお手本のよう。梅玉の源吾、歌六の其角もツボをピタリと押さえ、米吉のお縫もよく抜てきに応えた。

九段目「山科閑居」は「仮名手本」全段中の難曲。藤十郎の戸無瀬(となせ)がたたき込んだ丸本時代物の息の詰んだ芸で八十有余翁として驚異的な緊迫した舞台。魁春のお石もよく応じて前段の女の対決に丸本物の味わいがある。後段は幸四郎の本蔵と吉右衛門の由良之助の男の融和の芝居。両者そろった量感は天下一品だ。梅玉の力弥が年功ならではの味。扇雀の小浪も健闘。

見逃せない逸品が開幕劇「時平(しへい)の七笑」。我当が父・十三世仁左衛門譲りの芸を気概をもって見せる。歌六の道真、由次郎の希世(まれよ)も好助演。

井上ひさしの短編連作から歌舞伎化した「東慶寺花だより」は随筆歌舞伎の趣。染五郎の努力を認めたい。秀太郎らの自在の演技の競演が面白い。魁春・染五郎・橋之助の「おしどり」、梅玉・又五郎ほかの「乗合船」の舞踊2編は良きデザート。26日まで。

(演劇評論家 上村 以和於)

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