クリスチャン・ボヌフォワ展仏絵画史の空気に触れる

2014/1/15

アーティスト本人のギャラリートークに耳を傾けながら展示を順に眺めていたら、フランスの近現代美術史が醸し出す独特の気配が伝わってくるような感じがした。人間の知覚や感性の豊かさを引き出す一方、方法意識を研ぎ澄ませて制作しているのが言葉と作品の両方から感じ取れる。

理性をしっかりと働かせるが、感情もないがしろにしない。メゾンエルメスフォーラム(東京・銀座)で開催中のクリスチャン・ボヌフォワ展には、画家が抱いているそんな姿勢が表れているようだ。これまで漠然と肌で感じていたフランスの現代絵画史の空気にあらためて触れた気がする。

ボヌフォワは1948年生まれ。美術史家、美術批評家として活動を始めたが、70年にアンリ・マチスの彫刻「背中」を見て触発され、画家の道に入ったのだという。同展は70年代から最新の作品までが並ぶ小さな回顧展。初めて作品を見たが、優れた画家に出合う幸運に恵まれた。

トークを聞いていると理知に導かれて絵を発想し、制作しているのだと分かる。日本人には理が勝ちすぎていると思われるかもしれない。が、どの作品も言葉による説明とは次元を異にする強さ、しなやかさ、みずみずしさを兼ね備えている。理屈が勝手に独り歩きしているのではない。

例えば同展のために制作した「銀座上空の黄道十二宮の星座」。薄葉紙に描いた断片を組み合わせてコラージュを展開し、知的にもおおらかにも映る感覚で大きな壁面を満たしている。理知をよりどころとする意志が絵画制作の骨格をかたちづくっている点は、日本の美術にも参考になるだろう。2月28日まで。

(編集委員 宝玉正彦)