救急医療を充実 診療体制強化する「地域中核病院」日経実力病院調査2013

総合力のある診療体制を敷く病院はどこか――。日本経済新聞社が実施した実力病院調査では、救急医療を中心に地域を支える中核病院が高評価となった。重症患者を多く受け入れながら入院期間の効率化を図るため、診療データの分析を強化。複雑な疾患に広く対応できるよう内科と外科の連携を進める大学病院もある。医療の質や患者サービスの向上を目指す取り組みも定着しつつある。
墨東病院では診療データを分析し、院長が各部署の部長からヒアリングを行う(東京都墨田区)

東京都立墨東病院(東京・墨田)では急性期を中心とした診療体制の特性を評価する「DPC機能評価係数2」の5項目がオールA。入院期間の短さを示す「効率性」が前回調査のBから今回はAに上昇した。

■診療データ共有

救急患者の受け入れ水準を維持しながら、治療が難しい患者でもいかに早期の退院につなげるか――。このテーマを両立するのは難しい。同病院で「効率性」を高めた“切り札”は、診療データの活用だ。

病名や手術方式で医療費を定額とするDPC制度は、病院間でデータを比較できるのが特徴の一つ。同病院では症例ごとに薬の投与量や検査回数、入院日数などを分析し、ほかの都立病院のデータと比べられるソフトを導入。データ分析会議を月1回開き、各診療科で情報を共有している。

例えば、脳梗塞の患者が肺炎の合併症を患う頻度がほかの病院より高い場合、細菌を多く含んだ唾液や食べ物が誤って気道に入って起こる「誤嚥(ごえん)性肺炎」などの対策を点検する。食事のあり方の見直しや手術前に歯科医が口内を診察するなどして、早期退院につなげる。藤ケ崎浩人内科部長は「入院日数が短縮できるのは、患者が早くよくなっているからだ。DPCデータは医療現場に足りない要素を把握するセーフティーネットの役割を果たしている」と話す。

2012年には「術前サポートセンター」を開設。入院前に看護師が手術の日程や医療費などを患者や家族に説明するほか、必要な検査を外来で全て済ませておく。診療データの活用とともに、入院期間を短くできつつ、患者の負担も減るように工夫を凝らす。

同じく5項目がオールAは公立陶生病院(愛知県瀬戸市)。救急患者の受け入れを最優先課題に掲げ、夜間でも6人の医師を配置する。救急患者は1日平均約80人、救急車も同16台を受け入れる。その結果、「救急医療」は前回調査のBからAに改善。酒井和好院長は「断らないことが市民病院の使命」と強調する。

■医療設備を集約

新年には救命救急センターの新棟が稼働。災害拠点病院としてヘリポートや集中治療室、手術室などを集約する。「一刻を争う救急患者の負担を抑える」(酒井院長)ため、移動距離が短くなるよう設計した。救急医療の訓練にも余念がない。全職員が心肺蘇生法など救急救命の訓練を受けているほか、05年から災害やテロなどに備えた訓練も年1回開く。今年は地元の病院らと、細菌兵器を使ったバイオテロを想定した救命訓練を実施。緊急事態にも対応できる体制を敷く。

カバー率、地域医療、救急医療の3項目がAだった自治医大病院(栃木県下野市)。がんや脳卒中などの治療には、疾患臓器別に内科と外科という診療科の壁を越え連携する「センター化」を進めるほか、今秋には「総合診療内科」を新設した。患者の高齢化で複数の病気を抱える人が増加。「一つの診療科では対応が難しい患者を担当し、各センターと相談して治療を進める」(安田是和病院長)狙いだ。地域の医療機関と疾患別に研究会を設置。最新治療を共有し、重症患者は速やかに紹介してもらえる関係も築いている。

もっとも、大学病院ならではの課題もある。早く退院できるよう手術後の栄養管理などを徹底しているが、重症患者を多く受け入れるため、入院日数は長くならざるを得ない。安田病院長は「いい医療が必ずしも診療体制の評価につながるわけではない。日常の丁寧な診療を積み重ねたい」と話している。

◇            ◇

倉敷中央、機構評価で高得点 満足度アップへ、患者が「通知表」

日本医療機能評価機構の認定病院では、嬉野温泉病院(佐賀県嬉野市)、倉敷中央病院(岡山県倉敷市)など80点以上は4病院だった。

「ベビーカーを増やして」「医師が一方的に説明して話を聞いてくれない」。岡山県西部地域の急性期医療を担う倉敷中央病院(1161床)。患者の要望や苦情が月100件ほど寄せられる。提案箱やメールで受け付ける。院長に報告するほか、2カ月に1回開かれる医師や事務スタッフらでつくる「患者満足改善委員会」で、今後の対応を議論する。

病棟や事務などの職場ごとに、5~6人で患者サービスの改善にあたる約60のチームを結成。年1回、患者が医師らの対応を5段階で評価する「満足度調査」を実施、その結果も参考に各チームで目標を設定。患者への“おもてなし”を磨く。患者・職員サービス室の黒田弓子室長は「患者目線での対応を心がけている。刺激し合い患者サービスの向上に役立てる」と話している。