女性の観察眼、巧みに表現 大賞に「スコールの夜」第5回日経小説大賞

第5回日経小説大賞(日本経済新聞社・日本経済新聞出版社共催)の最終選考会が行われ、大賞に芦崎笙「スコールの夜」が決まった。今の時代に適合したストーリーの設定や展開のうまさ、無駄がなく優れた文章力などが高評価を得た。
芦崎笙氏(あしざき・しょう) 国家公務員。1983年大蔵省(現財務省)入省後、税務署長、大使館、 金融庁、内閣官房などの勤務を経て、現在、大臣官房参事官。日経小説大賞では第2回で「遥かなる王国」、第3回で「公器の幻影」が最終候補となった。53歳。

400字詰め原稿用紙で300枚から400枚程度の長編作品を対象とした第5回日経小説大賞には、200編の応募があった。経済、ミステリーから時代、歴史、ファンタジーなど幅広いジャンルの作品が寄せられた。50~60歳代の応募が約半数と多かった。

第1次選考を通過した20編から最終候補作となったのは5編。東大法学部卒の女性銀行員が組織や社会の現実に直面して葛藤する芦崎笙「スコールの夜」、幕末に江戸から奈良に赴任した奉行の生き方をリアルに描く宮澤洋一「過ぎし南都の日々」、平安時代の海賊、藤原純友が塩の利権を握って財を築き勢力を広げる指方恭一郎「塩の王」、ほか廣瀬とり「エルピスが残った」、葉月堅「戦場(いくさば)泥棒」が残った。

最終選考は6日、辻原登、高樹のぶ子、伊集院静の3人の選考委員がそろって開かれた。最初に各委員が授賞にふさわしい作品を複数推薦。「スコールの夜」「過ぎし南都の日々」「塩の王」が候補に挙がった。そのうえで全5作品について十分に内容を議論し、最終的に全委員が「スコールの夜」への授賞で一致した。

「男女雇用機会均等法施行後に女性総合職が組織で生きていくための大変さがよく描かれている」「かなりドラマ性がある一方、情報的にも非常に面白い。女性の観察眼がよく表現されている」とした内容面での評価とともに「今の時代に読むに足りる、なみなみならぬ力がある」と文章面でも高く評価された。

<あらすじ> 平成元年に東大法学部を卒業、都市銀行トップの帝都銀行に女性総合職一期生として入行した吉沢環(たまき)は女性初の本店管理職に抜てきされた。命じられたのは、総会屋・暴力団への利益供与や不祥事隠しなどの役割を担ってきた子会社の解体と、それに伴う200人の退職勧奨の陣頭指揮。保守的な企業風土による女性総合職への偏見や差別に耐えての昇進を意気に感じ、後進のためにもと荒療治に乗り出すが、男性行員の感情的な反発を招き、子会社を巡る経営幹部の派閥抗争に巻き込まれていく。