2013/12/24

防止には厳罰や監視重要

有名なホテルや百貨店の利用者は、家族の記念日や大切な贈り物など特別な思いがある時に奮発して高い料理や商品を注文する。“看板”が信頼性や安心感の価値の証とみる日本人のブランド信仰も背景にあった。「信頼やブランドが傷ついた損失は甚大でしょう」と丸山さん。企業側にとっては利用客への返金だけでなく、信頼が揺らいだことによるブランド価値の低下を考えると、虚偽表示でもうけた利益を吹き飛ばすほどの影響があったとみられる。

消費者の行動に詳しい博報堂生活総合研究所の主任研究員、山本泰士さん(33)が声を掛けてきた。同研究所は2年ごとに約3000人の意識調査をしている。

最近は老舗菓子店の賞味期限改ざんなどが発覚した直後の2008年調査で、「食品やその素材に不安がある」との回答が増えていた。12年には9.5%となり調査を始めた1998年(17.9%)以来最も低い水準だった。食の信頼が回復していた時だけに消費者の不信感は大きく、「一部の企業の行動が日本人の食の信頼全体を揺るがしかねません」と山本さんは指摘する。一時的には外食や贈答品を中心とした消費の落ち込みにつながる懸念もある。

「どうして食品偽装は繰り返されるのだろう」。章司が首をひねると、市場や契約に詳しい東京大学教授の柳川範之さん(50)が解説を始めた。「レストランや食品会社は、消費者が実際に使われている食材を見分けられないことをいいことに、ウソをつく誘惑に駆られるのです」

料理や商品になってしまうと、プロの料理人でも食材の種類や産地の違いを見分けるのは難しい。実際、これまで食品偽装が発覚したきっかけは内部告発や自社調査がほとんどだった。料理の売り手と買い手との食材に関する情報量の格差が大きくなる。こうした格差を経済学では「情報の非対称性」と呼ぶ。

問題は消費者の不利益だけにとどまらないようだ。外食業界が安い食材を使ってもうけ続けていると、消費者はメニューに表示されている食材や産地を信用しなくなり、安さや見た目だけで判断するようになるからだ。「売り手は安値競争に巻き込まれ、結局損をします」と柳川さん。