食品偽装、なぜ繰り返されるのか

「記念日にホテルで食事したのにメニューと違う食材でがっかりしました」。探偵事務所を訪れた近所の会社員の話に、探偵の松田章司が反応した。「そういえば食品偽装は以前、何度もニュースで見たぞ。なぜ繰り返すのか調べてみよう」

消費者と企業 情報に差

章司はまず有名ホテルでの外食メニューの虚偽表示の実態を聞こうと、日本ホテル協会(東京都千代田区)に問い合わせた。協会に加盟する247ホテルの約3分の1にあたる84ホテルが虚偽表示をしていたことがわかった。たとえばメニューに「芝エビ」と載せながら価格の安いバナメイエビを使ったり、解凍品を鮮魚と偽ったりしていた。

このほか百貨店内にあるレストランなどでも虚偽表示が発覚し、日本百貨店協会(東京都中央区)に加盟する85社の約3分の2にあたる56社(計132店)で判明した。

「なぜこんなに多くの会社が虚偽表示をしていたのかな」。章司の疑問に、外食産業に詳しい、いちよし経済研究所(東京都中央区)の主席研究員、鮫島誠一郎さん(48)が答えた。「安い食材を使ってもうけを出そうとしたのでしょう」

有名なホテルや百貨店のレストランなどは高い品質やサービスを重視している分、一般的な飲食店に比べて料金を高く設定している。ところが長引くデフレの影響でコスト削減に取り組まなくてはならなくなった。安い食材に切り替えたことを隠してもうけを確保していたようだ。

「社内のチェック体制も甘く、不正を見抜けませんでした」と鮫島さんは続けた。食材を変えたことを経営陣や管理担当者と、現場の料理人との間で情報共有を怠っていた。経営の利益優先とぬるま湯体質が常態化するなかで、虚偽表示が長年にわたって正されることはなかった。

「そういえば賞味期限の改ざんや偽装米など食品を巡るウソが繰り返されてきたな」。過去の食品偽装を思い出した章司に、マーケティングに詳しい明治学院大学教授の丸山正博さん(43)が「今回の問題は身近でブランド性の高いホテルや百貨店で問題が発覚し、多くの消費者がショックを受けました」と指摘した。菓子やコメ、牛肉など一部品目で起こったこれまでの問題とは重大さが違うという。