現在、民間療法を含めて標準の治療法はない。以前はマウスピースを使ったり歯を削ったりしてかみ合わせをよくする手法が多かったが、患者の身体的な負担が大きく、かえって悪化する例もあった。こうした反省から治療法の再検討が進み、最近は患者の負担をなるべく抑える手法を取り入れている。

原センター長は「体操などを取り入れる方法で、早く改善するとの報告がある」と指摘する。以前は生活に制限を加えて安静に過ごすよう勧める医師が多かったが、ここ数年で、マッサージや運動を積極的に治療に取り入れる考えが広がったという。

原センター長は顎周辺の筋肉を覆う組織「筋膜」に着目し、マッサージでほぐす治療を提唱する。患者は顎周辺の筋膜が癒着してこわばり、痛みのもとになるという。「まだ先進的な取り組みだが、これから筋膜に着目した治療は増える」とみる。

自宅で簡単にできるマッサージも推奨している。指に力を入れて首の後ろからゆっくりと前に移動する。こめかみを指で押して小さな円を描く。次に頭頂部からゆっくり指を耳の上まで移動させ、そのまま円を描くようにほぐす。

上浜院長は「パピプペポ」などとハッキリと発声し、歯を食いしばる癖で緊張した口周りの筋肉や舌をリラックスさせる方法を勧めている。さらに発声後、しっかりと唾液を飲み込むと筋肉と舌が収縮し、顎関節が安定した位置に戻る手助けになるという。上下の歯が接触しないようにするのもいいだろう。

■重症なら手術必要

マッサージでも痛みがまったく引かず、口が開かなくなったときは、病院で鎮痛剤や筋弛緩(しかん)薬を投与してもらって治療が始まる。重症と診断されたら、外科手術になるかもしれない。歯科医院を受診する人が多いが、病院によっては口腔(こうくう)外科などでも対応できる。独自の治療法を施す医師もいるので、自分が納得できる治療を見つけよう。

現代社会はパソコンに向き合う生活習慣やストレスの影響で、関節症を誘発する要因があふれている。日ごろから顎への負担を減らす心掛けも大切だ。自分でリラックスする時間をつくるといいだろう。

(山本優)

[日本経済新聞夕刊2013年12月20日付]

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