秋山副院長によると骨が見えるようなひどい状態でも、適切に処置すればきれいに治る。毛穴が見えるくらいの浅い傷なら元通りになる。傷が毛穴より深い部分に達していると、「肉芽」という組織が盛り上がって元の組織を代替する。

重症のケースには壊死した組織は取り除いて、余分な水分を吸い取りながら治療する。傷口にスポンジを当てて浸出液を吸い取る「陰圧療法」を使えば、大きな傷もきれいに治る。

■命に関わる事態も

最も恐ろしいのは傷口から雑菌が入り込んで炎症を起こすことだ。菌が全身に回ると命に関わる。傷口は頻繁にぬるま湯で洗って清潔にする。

日本褥瘡学会理事長を務める東京大学の真田弘美教授は「今後は在宅ケアが課題」と強調する。病院での褥瘡発症率は入院患者の1%だが、在宅では依然5%と高いという。

予防は寝返りなどの体圧分散とスキンケア、栄養が重要だ。横になる体勢やクッションなどを工夫して体重が1カ所にかかり続けるのを防ぐ。

もっとも、寝たきりの患者が自分で体を動かすのは難しい。家族などが頻繁に寝返りを手伝うことが望ましい。

通常は2時間ごとに姿勢をかえる必要があるとされる。ただ、上質なマットレスを使えば、4時間に延ばしても大丈夫との研究結果もある。褥瘡のできやすいおしりや、かかとなどの様子を見ながら、皮膚に赤く発疹ができる前に寝返りするようにする。

下痢でおしりが汚れると炎症を起こしやすく感染リスクも高まる。あらかじめ水をはじくクリームを塗っておくと皮膚を守れる。

栄養をしっかり取って肉がついていれば、褥瘡になりにくく、傷ができても治りやすい。栄養ドリンクはかつて味が悪かったが、おいしい製品も出てきた。傷が治るのに必要なビタミンやミネラル、たんぱく質などを含む。根本的な治療にはならないが、医師や看護師らと相談してみるとよいだろう。

運動と栄養は予防や治癒を早める効果がある。口から食べる人が褥瘡になりにくい理由について真田教授は「食べるために体を起こすので体圧が分散される。体を動かすのは生きる意欲を持っているからだろう」と語る。

体力を保つのが最大の予防法だが、飲み込む力が弱っていると食べたものが誤って肺に入りやすい。肺炎を起こすと体力を奪われてしまうため注意が必要だ。

(岩井淳哉)

[日本経済新聞夕刊2013年12月13日付]