千葉県松戸市にある東葛クリニック病院。医師や看護師、栄養士らからなるチームは毎週火曜日に、褥瘡を患う入院患者を回診している。多いときは7人の世話をする。
80代の患者は自分で体を動かせない。鼻に入れたチューブでの栄養投与を始めてから、おしりの辺りに褥瘡ができた。口から食事ができるまで体力が回復すると傷はふさがった。
褥瘡は体の重さで皮膚が押されて、血の巡りが悪くなるのが原因だ。移動するときにシーツで皮膚が引っ張られ、皮膚の内部が傷つく人もいる。骨側から始まるケースもあり、診断は皮膚表面の様子を見ていても分からないため、超音波を使って調べる。
発症は足腰が弱って寝たきりになった高齢者で、認知障害や知覚障害を持つ人が多い。痛みを感じにくくなっているため、重症になりやすい。痛みを感じる人は、自分で体を動かすので予防になる。
特に褥瘡ができやすい部位は骨が出っ張っている部分だ。腰から背骨を探ってみると、おしりの少し上で背骨が始まるところに仙骨がある。あおむけになったときに体重がかかる。
そのほか体の側面では、太ももや腰の骨が突き出た部分や、わきの下の肋骨のあたりもできやすい。かかとにもできる。
治療は「デザイン」という指標を使う。傷の広さや深さ、水分量など7項目を測って、最も悪い部分から処置する。皮膚への圧力だけでなく、血管の病気で血の巡りが悪くなっても原因となる。治療方針が変わるので注意が必要だ。
日本褥瘡学会が作るガイドラインで、塗り薬や貼り薬など、各項目の処置に対応する様々な薬などが一覧できる。浅い傷であれば透明なフィルムを貼って保護しながら経過観察する。「気を使って主治医や看護師に言わない患者や家族もいるが、遠慮せず相談するとよい」(東葛クリニック病院の秋山和宏副院長)。