年賀状に消しゴムはんこ 意外と手軽、1時間で完成
デジタル時代に手作りの温かみ
軽く掘って優しい曲線
11月中旬、東京都内で開いた消しゴムはんこ教室では、20人の参加者が真剣な表情で消しゴムを彫り進めていた。テーマは、来年の干支(えと)であるウマ。
トレーシングペーパーとシャープペンシルを使って、消しゴムに下絵(イラスト素材や自分で描いた絵)を転写し、カッターで彫る。初心者で完成までにかかった時間は約1時間。できあがりを見せ合って「表情がかわいらしくできた」「脚はちょっと太いけど、結構気に入ってるの」と、会話も弾む。
参加者の二階堂敦子さんは、ウマの絵柄に棒を組み合わせてメリーゴーラウンドを完成させた。「ここ5年間、正月はメールだけだった。手作りはんこを押した年賀状で友人を驚かせてみたい」と笑顔をみせる。
講師を務めた消しゴムはんこ作家の津久井智子さんは「手軽に優しい雰囲気の絵柄を作れるのが消しゴムの良い点です」と話す。消しゴムは弾力性があるため曲線を彫りやすい。木版などを彫刻刀で直線的に彫る場合に比べ、暖かい印象のデザインが作りやすい。
カッターと消しゴム、インクなどを文具店で買えば1000円程度で手軽に始められる。サツマイモなどで作るイモ版に比べ、崩れにくく保管しやすいのも利点だ。
「始めるのは簡単だが、技術を極めようとすると奥が深い」(津久井さん)という点も人気の理由。初心者の場合、カッターを差し込む深さや角度の感覚がつかめず、思うような形に彫れないことがある。
力まかせにカッターを使うと消しゴムが所々で崩れてしまう。上達するほど、小さな力で自然な曲線を描くことができる。「次はもっと上手に」という気持ちで、熱中する人も多いという。
彫り終えたら、次はインクを付けて押す。津久井さんは「色の種類や濃さ、押す位置などを変えれば、1つのはんこでも全然違うデザインが作れます」と話す。
ウマの絵柄が1つしかなくても、場所を変えて3、4回押せば群れになる。顔を上に向けて押せば、跳びはねているように見える。押し方は遊び心の見せどころだ。はがきはインクジェット紙を選ぶとインクが染みやすく、よいという。写真用の紙は向いていない。
直筆でひと言添えて
年賀状を送る際、せっかくなら手書きでひと言書き添えたい。メールやSNS(交流サイト)で新年のあいさつをする人が多い時代。「ペンを握り、その人のことを考えて書いた文字は、とても魅力的に映る」とコミュニケーション・インストラクターの杉山美奈子さんは話す。
上司など目上の人に対して、何を書けばよいのか悩む人は多いだろう。基本は「謹賀新年」「明けましておめでとうございます」など新年のあいさつに加え「旧年中は大変お世話になりました」「本年もご指導をよろしくお願い致します」といった定番フレーズ。
さらに、相手の趣味や共通の思い出などについて具体的に書く。書く内容が特に思い浮かばない相手には「○○さんのご健康とご多幸をお祈り申し上げます」と書き添えるのが無難だろう。
筆ペンや、インクがうっすら染みる水性ボールペンを使うと、文字に優しい雰囲気がでる。
送っていない相手から年賀状が届いた場合は、1月7日までに相手先に届くなら年賀状。1月8日到着以降は寒中見舞いを送る。どちらの場合も「ごあいさつ遅くなりました」と書くと印象がよい。
(武田健太郎)
[日経プラスワン2013年12月7日付]
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