国立病院機構・鳥取医療センターや藤田保健衛生大学などと共同で減量の臨床試験をした結果、ゆっくりと慎重に減らせば、体への負担がなく、安全なことがわかった。この研究成果に基づき、SCAP法という方法による減量を支援する計算シートを10月に公表した。

今後は「ガイドラインの活用など臨床の医師が質の高い医療を提供できるようサポートする仕組みや、活動が日本に必要だ」と伊藤部長は指摘する。

■入院長引かせず

治療では薬以外の部分も重要になってきている。「患者さんと信頼関係を作り、治療法についての意思決定をシェアするSDM(シェアード・ディシジョン・メーキング)が大事」と話すのは東京大学の笠井清登教授。

例えば、幻聴や妄想を真実として信じているが、興奮状態はなく、暴れたり、死にたいと思ったりしない軽度の人の場合は、まず本人の訴えをよく聞き、信頼関係を構築する。すぐに薬というわけではないという。

最近重視され、広がりつつあるのが「リカバリー・モデル」という手法だ。ここでいうリカバリーは、患者自身が病気をどうコントロールし、地域で自分自身に価値を見いだして生きるかという意味だ。患者が主体的に治療のゴールを目指すのを病院が支援する。

なるべく早く治療を開始し、入院を長くせず、地域に戻れるようにする。健康な人と同じ状態に戻る必要はないとし、新たな人間性、人間的価値に気づいて幸福に生きている状態になることを指す。東大病院では考え方としては昔からあるという。

これは、患者をなぐさめるためのモデルではなく、希望が持てるようにするモデルという。

長くかかる病気なので、例えば20歳で発症し、30歳でリカバリーしたとして、その10年間に脳と心の発達が変化していくので、こういう考え方が重要になるという。

「病気になったことで新たな自分を発見できました」「病気になって良かった」――。笠井教授はリカバリーした患者からこんな声を聞く。「負け惜しみで言っているのではなく、本当に生き生きして話す」と強調する。

「患者さんは医療従事者と手を取り合って、リカバリー・モデルを目指してほしい。医療従事者も、ぜひリカバリー・モデルを念頭に置いて取り組んでほしい」と笠井教授は訴える。

(編集委員 賀川雅人)

[日本経済新聞夕刊2013年12月6日付]

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