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 女性社会と言われる看護職場に男性が増えてきた。男性看護師は10年前に比べ、2.4倍の約6万3千人。大学の新設など受け皿拡大や積極的に採用する病院もある。男性ならではの力仕事や機械操作から、看護全般までこなすという仕事ぶりが最近の医療現場では定着しつつある。高齢化に伴い、ケアの担い手の需要が一段と増す中、男性看護師の存在は、女性にも強い味方になっている。

男性患者は「歓迎」

医療現場で活躍する男性看護師(東京都新宿区の慶応義塾大学病院)

医療現場で活躍する男性看護師(東京都新宿区の慶応義塾大学病院)

11月下旬、慶応義塾大学病院(東京・新宿)の脳神経外科などの入院病棟。午前8時過ぎ、看護師、田口大介さん(34)の仕事は約15人の患者の電子カルテの確認から始まる。4人の看護師と、入浴やリハビリ、手術、検査など患者のスケジュールを打ち合わせる。ナースコールが鳴ればベッドに駆けつけ、食事や入浴介助なども行う。男性患者からは「シャワーの介助で恥ずかしくない」「話しやすい」など歓迎の声もある。田口さんは2005年、都内の看護大大学院を卒業。現在はチームリーダーを務め、「普段の仕事は男女とも一緒」と話す。

慶大病院の男性看護師は現在、77人と全体の8%を占め、全国平均(6%)を上回る。01年の看護医療学部の開設を機に、男子学生の受け入れを開始。看護師が男性の職業としても認識されてきたことや、少子高齢化で幅広い人材を集める必要性が高まり、積極採用にかじを切った。鎮目美代子看護部長は「大きな声をあげたり、物を投げたりするなど不安定な患者の対応には男性看護師が頼りになる」と強調。現在は産婦人科を除く全病棟に配属しており、「男女に関係なく、本人の希望や能力、適性を考慮している」と話す。

筑波大学病院(茨城県つくば市)では男性看護師は全体の約1割。集中治療室に所属する看護師の桜本秀明さん(33)は4年前、都内の病院から転職した。勤務しながら、毎週金曜日は筑波大大学院の博士課程に通う。研究テーマは「気管吸引法の違いが肺に与える影響」。桜本さんは「人工呼吸器を付けた患者を目の当たりにし、早く外せる方法を研究したい。専門性を高め、成果を現場で生かしたい」と意気込む。

男性看護師が増えるきっかけは、1985年に成立した男女雇用機会均等法といわれる。82年の3895人から86年には1.7倍の伸び。90年代後半に入ると、医療技術の高度化に対応するため、4年制の看護大学や看護学部の新設が相次ぎ、男子学生の受け皿が拡大。それに加え、最近では08年のリーマン・ショック以降、企業の雇用情勢が厳しくなったことや東日本大震災を機に医療の仕事に関心が高まり、看護師を志す男性が増えてきた。

12年度に全国の看護大に入学した男性は5年前に比べ、約1.4倍の約1900人。全体の約10%を占める。都立青梅看護専門学校(東京都青梅市)では今年度の入学者80人のうち、約3割が男性。男性が初めて入学した1980年以降、最も比率が高い。

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