歴史の読み解き方 磯田道史著今に生きる江戸 最新研究から

2013/12/5
(朝日新書・760円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

ひところ、国民文化の創造に光をあてた歴史分析が、たくさんでた。明治維新政府が、一国の独立を勝ちとるべく、人々に国民としての自覚をうえつける。この過程をつうじてすりこまれた考えが、現代人をしばっている。そんな論法を、これらの分析はとってきた。

 そういった読みときに、著者があらがっているわけではない。しかし、国民文化論ではぬけおちてしまう歴史の筋道を、この本は多くひろいあげている。とりわけ官僚機構の体質、訴訟のあり方などは、江戸期以来のそれに由来するという。

 江戸時代の税は、主として米にかけられた。商業活動は、ほとんど課税対象になっていない。農業に軸をおくこのしくみこそが、人々を税金のかからない商業へとかりたてた。著者は、江戸の経済史をそう位置づける。目のさめるような指摘である。幕末におけるブルジョワジーの発達を、新しい角度から教えてもらうことができた。

 日本の各地、各藩でことなる諸事情への目くばりも、ありがたい。目新しい史料も、たくさんほりおこしている。そして、それらをことごとくひけらかさず、かくし味として活(い)かす筆法にも脱帽した。

★★★★

(風俗史家 井上章一)

[日本経済新聞夕刊2013年12月4日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

歴史の読み解き方 江戸期日本の危機管理に学ぶ (朝日新書)

著者:磯田道史
出版:朝日新聞出版
価格:798円(税込み)

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