「現代の名碗」展たぎる創意、今を映す茶碗

2013/11/28

茶碗(わん)のおもしろさを味わえる展覧会に出合った。東京・虎ノ門の菊池寛実記念 智美術館で開催中の「現代の名碗」展である。近現代の作家によるおよそ70点。そのうち30点近くを新作が占めているのは、企画を手がけた同館前館長、林屋晴三氏が現役の出品作家に直接手紙をしたため、その多くに「既知の作品を超える茶碗を作ってほしい」と依頼したからだ。

「いま生きている人間で最も多くの茶碗を見てきた」と自他共に認める林屋氏は11歳ころから70年以上茶道に親しんだ。本展は今年5月まで務めた同館館長としての最後の企画であり、何より現代にふさわしい茶碗を作家とともに見いだそうとする気概に満ちている。

茶陶には桃山時代以来の数多くの名碗があるだけに、作家にとっても手ごわいにちがいない。その意味で展示の冒頭に川喜田半泥子をおいたのは「徹底した創意」を重んじる企画者らしいたくらみだ。古典をただなぞらず、作為だけにも頼らぬ自然体で――。若い作家に向けたメッセージともいえる。

現代の目利きの要請にこたえたベテランの新作も存在感たっぷりだ。鈴木藏(おさむ)(1934年生まれ)の「志野茶碗」は、雪の下にのぞく大地や冬山の尾根を思わせるおおらかな景色。川瀬忍(50年生まれ)は今回の展示のために新しい青磁のうわぐすりに挑戦したそうだ。茶碗の底にわずかにたまる澄み切った水色の光に目を奪われた。

30代の桑田卓郎が林屋氏とディスカッションしながら初めて茶碗に挑んだという1品はメタリックな光沢と装飾性が魅力。茶人や数寄者、その時代の好みを映し出してきた茶碗の可能性を感じさせた。来年1月5日まで。

(文化部 窪田直子)

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