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没後一年 宇佐美圭司展 詩と響き合う自由な感性

2013/11/21 日本経済新聞 朝刊

セゾン現代美術館(長野県軽井沢町)が「没後一年 宇佐美圭司展」を開催中だ。昨年10月に亡くなった宇佐美が20歳前後に制作した作品から最後の大作「制動(ブレーキ)・大洪水」までが並んでいる。画家の歩みをまんべんなくたどれる内容で、充実した回顧展といえる。

初期の作品から方法意識で貫かれているのが伝わってくる。そうした自覚的な姿勢が絵に理知的な気配を生じさせているようだ。が、温かみをはらんだ叙情がたえず確かな感触で流れている。しかも、画面の大小を問わず、絵から立ち上る気分が大きく、のびのびとした画家の身ぶりや心の構えがしのばれる。

例えば20代後半から繰り返し使い続けた4種類の人の形。アメリカの雑誌に載った暴動写真からパターン化して抽出した人型で、絵の中で増殖させるかのように配した。いわば機械的な作画の方法だが、詩人に通じるのびやかな感性が流れ、絵が記号と化したり観念に陥ったり決してしない。

詩との相性の良さは、水彩とインク、色鉛筆などで描く小ぶりな作品に特に顕著に読み取れる。例えば、「ホリゾント・黙示 8つのフォーカス8」に添えられた詩人、辻井喬の詩にはこうある。「砂は静かな風になって流れ/傾いてゆく遊星を見送って/いまの人は流れ星で自らの愛を編む」。絵と詩がどこでどうつながっているというのではないが、何かが響き合っている。

この画家は、どんな方法を選び、どう使いこなすべきかを直感的に知っていた天性のアーティストだったのではないかと思えてくる。12月23日まで。休館は木曜。11月25日からは金~日曜日と祝日のみの開館。

(編集委員 宝玉正彦)

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