震災時、避難できる? 「防災ピクニック」で体験
避難経路や非常食確認
川崎市に住む菅崎直子さん(34)は自宅に備えていた防災リュックを試しに背負ってみて、がくぜんとした。生後8カ月の11キロの次女を前に抱えながら、5キロを越える荷物を持って長距離を移動するのは無謀だと思った。「夫が不在のときに被災したらと思うと……。中身を見直します」
NPO法人「ママプラグ」(川崎市)は東日本大震災で被災した母親へのヒアリングを通して、普段から実践できる防災対策を提唱している。
その一つが「防災ピクニック」。避難バッグを背負って子どもを連れ、自宅から避難所まで歩き、そこでお弁当の代わりに非常食を試す。「避難時に本当に必要なものが見えてくる」と理事長のロー紀子さんは話す。
10月末、秋晴れの下でママプラグ主催の防災ピクニックが開かれた。参加者は大人6人、未就学児4人。避難を想定して集合場所から10分弱歩き、多摩川河川敷(広域避難場所)に向かった。
途中でブロック塀や角がはがれた看板などがあった。「地震が発生したら凶器になり得るものがある場所は事前にチェックしたい」とローさん。
目的地に着くと持ってきたものを見せ合う。冬の必需品である防寒シートを点検。商品によっては破れやすかったり、なかなか体が温まらなかったりする。「避難リュックに入れ忘れていたので気付いてよかった」と参加者の勝呂芽育(40)さんは胸をなで下ろした。
非常食は持ち寄ったものを食べる。缶詰パンは子ども受けが良く、つゆ入りのソバはキャンプ用コンロを使って5分以内に出来上がった。非常食は自分の口に合うものを備えるのが理想。「人数が多いほど、いろいろな種類を試すチャンスになる」(ローさん)
「子ども用レインコートは排せつ時に目隠しになるので入れておきたい」「親子で500ミリリットルのペットボトル2本は最低持って逃げたい」
防災ピクニックは「実践中に気付いた点を検証し、改善する作業が重要」と、災害時の対応に詳しい甲南女子大学名誉教授の奥田和子さんは話す。子どもがいない家庭でも、万一への備えは大切。家族や友人、近所の人と一度は実践したい。
リュックの中身見直し
避難バッグには、何を入れればいいのだろう。
水は1人当たり1日2リットル以上必要といわれるが「家族分を持ち運ぶのは非現実的」と、災害時の危機管理に詳しい国崎信江さんは話す。命からがら逃げる際に持てる重さは「片手でつかんですぐに出られる程度」だ。
図表に避難グッズの例をまとめた。Aは通勤カバンやハンドバッグに常時入れておきたいもの。止血用ガーゼやばんそうこう、除菌シートは応急処置の必需品。マスクは地震直後の粉じんが呼吸器に入るのを防ぎ、避難生活では気になるにおいを遮る。「アメやビスケットなどかさばらない食べ物も入れたい」
BとCはリュックにまとめてすぐに持ち出せる場所に常備しておくもの。防炎素材の袋に入れると安心だ。
リュックに入る非常食の量は限られる。優先したいのは「ビスケットやおかきなど自分が好きな、心を満たすもの」(奥田さん)。その次がゼリー飲料やレトルトおかゆなど、火を使う必要がなく、食べるときに水分を多くとる必要のない食材だ。水や非常食はリュックとは別に、数日分を台所などに備蓄する。
コンタクトレンズや常備薬など必携品には個人差がある。中身を厳選し、マイ避難バッグを作ろう。
(坂下曜子)
[日経プラスワン2013年11月9日付]
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