歌舞伎座11月公演「仮名手本忠臣蔵」責任感表す一所懸命ぶり

顔見世月の歌舞伎座は大一座による「仮名手本忠臣蔵」の通し。菊五郎の塩冶判官と勘平、吉右衛門の四段目と七段目を通しての大星由良之助。どれも何度も演じてきた役だが、芸の円熟に加え、いつにも増しての「一所懸命」ぶりは自分一個の芸の完成だけでなく、次代の歌舞伎を見据えて第一線に立つ者の心構えの表れだろう。菊五郎の判官の切腹の場、六段目の勘平の緊張感の持続のすごさ。吉右衛門の大星のセリフ一つでドラマの奥行きが大きく広がる醍醐味。どちらも、今見ておくべき舞台である。

大序で七之助の足利直義が一大戯曲の第一声を発する役らしい品格が出色。芝雀の顔世も品格の中から上品な色気が匂い、ドラマの発端となる役にふさわしい。左団次の師直は大序の人形身の風格が全段の充実ぶりを予知させる。石堂も老巧。歌六の薬師寺が本来この役が赤っ面の役であることを示すきっぱりした好演だが、本来は石堂の人だろう。梅枝の力弥が若手の本格派としての資質を見せる。

梅玉が若狭助、「道行」の勘平、平右衛門と3役を勤める中で、平右衛門の情味が福助のおかるのオキャンでかわいい女ぶりと、兄妹の真実味を生む。それを包み込む吉右衛門の大星の懐の深さが廓(くるわ)の秋の夜更けらしい情趣を醸し出し出色の七段目となった。

道行と六段目のおかるは時蔵で、おっとりと大輪の花のような色香が福助と対照的。東蔵のおかやは、この役の一面にある怜悧(れいり)さがユニーク。四段目の原郷右衛門は有能な秘書課長というところ。新たに幹部昇進した橘三郎と松之助が昼夜を通じ斧九太夫と伴内を勤め、培ってきた力を見せる。七段目の一力茶屋の仲居を勤める女形連がよき花盛りの感。25日まで。

(演劇評論家 上村 以和於)

注目記事