燃える家 田中慎弥著国家に関わり始める高校生

2013/11/8
(講談社・2300円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

千枚を超える大長篇(へん)小説である。田中慎弥の最新作『燃える家』はまず、田中のこれまでの小説と同じように、山口県の赤間関という地方都市が舞台になっている。

 高校生の滝本徹には出生の秘密があった。とある政治家が彼の実父なのだった。2学期が始まったある日、アメリカで同時多発テロが起こる。徹と行動を共にしていた相沢良男は、あらゆる行為の無意味を唱え、クリスチャンの国語教師、山根忍をつけ狙っていた。

 地方都市の、どこか牧歌的な出来事ではない。高校生たちの行動が徐々に国家の中枢にいる政治家と関係し始めるあたりから、一気に小説は別の顔を見せ始める。

 世には「不敬小説」と呼ばれるジャンル(?)がある。天皇を小説として扱う作品だが、田中のこの小説は不敬小説として読まれるかもしれない。

 ただ、問題が複雑なのは、天皇の何を描けば、いま不敬小説たり得るのか、という点が不明瞭な時代に私たちが生きているということだ。この小説は、不敬小説とは何なのか、という原点へと私たちを連れ戻す。

 それにしても、田中の語り口の平易さ! 小説家は変化し続けている。

★★★★

(批評家 陣野俊史)

[日本経済新聞夕刊2013年11月6日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

燃える家

著者:田中 慎弥
出版:講談社
価格:2,415円(税込み)

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