数字を追うな 統計を読め 佐藤朋彦著統計を扱う注意点を丁寧に解説

2013/11/6

ビッグデータ活用に向けた動きが広がる中、最近はデータ分析や統計学に関する書籍も数多く出版されるようになった。本書はデータ分析の専門書とは異なり、統計の歴史や作成の現場、統計を読み解く秘訣などを数式を使わずに丁寧に解説する。著者は総務省統計局に属する現役官僚ということもあり、調査票の設計から回収までの苦労話から統計利用の基本マナーまで「統計のつくり手」ならではの目の付け所が味わえる。

(日本経済新聞出版社・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

 本書では「家計調査」「労働力調査」「国勢調査」などをもとに、統計で何が読めるようになるのか、多くの興味深いエピソードが紹介される。家計調査からは「西の牛肉、東の豚肉」といった地域による食文化の違いが消費量にどう影響しているかが分かる。同調査の日別集計を活用すれば、テレビで話題となった商品の購買変化を追える。国勢調査と航空写真から東日本大震災の被害状況を把握したエピソードも興味深い。

 統計のつくり手としての視点が強く出ているのが、統計の扱い方に関する記述。著者はインターネットの普及で統計へのアクセスが便利になった半面、統計の扱い方が乱暴になったと指摘する。一ケタ数字の注意点、推計値と予測値、概算値と確定値の違い、上下水道料が10月に多い理由、調査票の変更が与える影響など、統計を使う注意点を丁寧に解説。数字だけでなく、調査概要、用語解説、標本設計、調査票を読むことの重要性を一貫して強調している。

 本書からは二つの重要な示唆が得られる。一つは「政府統計の重要性」である。ビッグデータ・ブームの中で自社データへの関心が強まる一方、政府統計については認知度、活用度とも十分とは言い難い。本書の事例からは、政府統計からもビジネスで重要な情報を得られることが理解できる。二つめは「調査プロセスの重要性」である。本書は数値に飛びつく前に調査票を読むように説く。問題意識や仮説を強く持つ分析担当者が陥りやすいわなと言える。「統計は水や空気とは違い、人間社会がつくり出していく数値情報」という本書のメッセージを重く受け止めたい。

(日本リサーチ総合研究所主任研究員 藤原裕之)

[日本経済新聞朝刊2013年11月3日付]

数字を追うな 統計を読め

著者:佐藤 朋彦
出版:日本経済新聞出版社
価格:1,680円(税込み)