元気もらうならベートーベン クラシック演奏会入門
初心者なら前方の席
「クレッシェンド(だんだん音を強く)お願いします」――。
東京交響楽団がサポート会員向けに、ミューザ川崎シンフォニーホール(川崎市)で開いたイベント。本番前の通し稽古を会員が見学するなか「コバケン」の愛称で知られる指揮者の小林研一郎さんの声が響く。
参加した水越睦美さん(37)は「弦楽器が一緒に動いたり、金管楽器が一斉に鳴ったりする様子が楽しい。普段見られないような、曲が完成していく様子を間近に体験できる」と目を輝かせた。
コンサートは全国のホールで開かれている。国内楽団のチケット代は2千~7千円前後が多い。特定の楽団の会員になれば、冒頭の見学会のような特典も受けられる。
実際に聴きに行く際はどんな席がいいのだろうか。ホールによっても異なるが「一般的には2階席正面が全ての楽器の音が調和し、響きもいい」(クラシック音楽情報誌「ぶらあぼ」の大塚正昭編集ディレクター)。
初心者にお勧めなのは「演奏者に近い前の方の席」(同)だ。「2階席脇や舞台の後ろも、指揮者の表情も見えるなど意外性があって面白い」(音楽評論家の諸石幸生さん)。後ろの席は3千円前後と比較的安い。
座席はインターネットで指定できることが多い。トイレが心配な人は、立ちやすい扉付近を選べばいい。最近は子ども連れを対象にした演奏会も増えている。
演奏会情報はCDショップや楽器店などに置かれたフリーペーパー「ぶらあぼ」「ぴあクラシック」や、ホールや楽団のホームページなどで今後半年分ぐらいが分かる。
何を手始めに聴けばいいか悩んだ場合は、著名な作曲家の有名曲を選ぶといい。聴いたことのあるメロディーが大音量で迫ってくるのが、コンサートの醍醐味の一つだ。
オーケストラという演奏形態が登場したのは交響曲を多く残したベートーベンの時代。「主題を提示し展開させていく交響曲からは人間ドラマを感じられるはず。チャイコフスキーはロシアの自然や憂いの感情をよく表している」(諸石さん)
年末には合唱の入る第4楽章が有名なベートーベンの第9番交響曲や、クリスマスの夜の出来事を描くチャイコフスキーのくるみ割り人形の演奏会が増える。「土日は初心者向けの曲も多い」と大塚さんは話している。
服装は気にせずに
コンサートはマナーを守って楽しみたい。
服装は「演奏家に失礼でない程度で、清潔感さえあればシャツ類で問題ない」(諸石さん)。特に安価な席には学生も多く、普段着で構わない。「緊張しないで音楽を楽しんでほしい」
開場は開演30分前のことが多い。開演に遅れたら、ホールの係員の案内に従う。楽章の間に入るか、次の曲まで待つ。
座席に着いたら、携帯電話の電源が切れているかを確認しよう。ホール側で電波が届かない配慮をしているが、目覚まし機能などアラーム音までは防げない。消音にしていても、振動は周りの人に意外に聞こえる。
演奏中に感想を話すことは、小声でも響くので厳禁。チラシ類もかさかさ鳴るので触らない。
せきを気にする人は多いが「ハンカチなどで口を覆うだけで、音は小さくなる」(諸石さん)。できれば演奏音の大きなときを見計らいたい。
いびきのほか、補聴器をうまく装着できていない際のハウリング音など、本人が気づかない場合もある。周囲の人が静かに教えてあげるといいだろう。
(吉野真由美)
[日経プラスワン2013年10月26日付]
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