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「モローとルオー」展 高めあう師弟 心の交感

2013/10/21 日本経済新聞 朝刊

芸術に限らずどんな分野でも、名をなした専門家がよき師になるとは限らない。伝統や旧弊にとらわれずに若い世代のチャレンジを後押ししたり、ましてや安定した地位に甘んじずに学び続けたりすることは意外に難しいことなのだろう。

19世紀末象徴主義の画家ギュスターヴ・モロー(1826~98年)はその意味で理想的であり、また幸福な教師でもあったのではないか。開催中の「モローとルオー 聖なるものの継承と変容」展でモローとまな弟子、ジョルジュ・ルオー(1871~1958年)の心の交感に触れ、そんな思いにとらわれた。40歳以上も年が離れた師弟が互いを高めあいながら人間の崇高なる精神を生涯追い続けたことが明らかにされているからだ。

65歳で正式にパリ国立美術学校の教授になったモローの教師歴はわずか6年ほどにすぎない。しかし、「正道」を踏み外してでも自らの絵を描く大切さを弟子に説いた名物教授は、マティスらフォーヴィスム(野獣派)の画家たちを育てたことで知られる。

中でも20代のルオーの才能には深い信頼を寄せ、彼が画家の登竜門「ローマ賞」に2度落選するとまるで自分のことのように憤り、退学を勧めたほどだ。絵の具を塗り重ね、色を削り出すルオー独特の絵肌は、自由と創意を重んじる師の教えが生んだといえるだろう。

パリのギュスターヴ・モロー美術館に先駆けて開催される本展の見どころの1つは、モローによる複数の「油彩下絵」。細密な幻想絵画を得意としたモローが抽象絵画さながらの色彩の「実験」を繰り返していたことは驚きだ。これもまた若い世代と交わった効果だったのかもしれない。12月10日までパナソニック汐留ミュージアム。長野・松本市美術館に巡回。

(文化部 窪田直子)

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