手書きの手紙、好印象の秘訣 書き出しは3段構成
季節感と思いやり大事
東京都のIT系企業で働く味沢麻央さん(37)は、仕事の案件が一段落するたびに同僚の席にお菓子と一緒に小さな手紙を添える。「残業までしてもらってありがとね」「あのアドバイスに助けられました」。エピソードを具体的に挙げながら感謝の気持ちを書くことを意識している。
話し上手なタイプではないという味沢さん。会話の中で上手に「ありがとう」を伝えるのが苦手だった。「無愛想に思われそうな私だけれど、手紙に救われました」とほほ笑む。
2012年度の「国語に関する世論調査」(文化庁)によると「今後もなるべく手書きで手紙を書くようにすべきだ」と答えた人は50.2%で、04年度の前回調査に比べて2.4ポイント増えた。スマートフォン(スマホ)やパソコンで簡単にメールが送れるなか、手間をかけて気持ちを伝える手紙の大切さが再認識されている。
私生活やビジネスでよく使う手紙の種類は大きく分けて2種類。1つは贈り物のお菓子などに添える小さな手紙。一筆箋という長方形の便箋に文章を数行書く。身近な相手にはこれで十分だ。
もう1つは、便箋を封筒に入れ切手を貼るいわゆる手紙。普段会えない相手や、心から感謝を伝えたい場合に利用する。
後者の手紙になると「拝啓」「敬具」などルールが難しそうだが、友人や面識のある取引先ならば形式ばる必要はない。手紙文化振興協会のむらかみかずこ理事長は「季節感と相手への思いやりが伝われば十分合格点です」と話す。
意識したいのは書き出し。「錦秋の候~」など難しい季節のあいさつではなく、背伸びしないのがコツという。
「お久しぶりです」「お世話になっております」などのあいさつに「最近は涼しくなってきましたね」など気候に関する話題を加え「お元気ですか」「その後、お仕事の方はいかがですか」と相手の近況を尋ねるのが基本パターンだ。
次の段落からは、メールの文面と同じように、話し言葉を交えて書くと親しみが伝わる。相手の顔を思い浮かべながらペンを握ると、文章に気持ちを込めやすい。
便箋・ペンも印象左右
文房具も手紙の楽しみの一つ。上手に選べば、普段書き慣れない人でも本格的な雰囲気の手紙ができ、相手への心配りが伝わる。
便箋は紅葉や雪、桜など時々の季節が感じられる絵柄を用意しておきたい。目上の人や友人など相手を選ばず使えて便利だ。仕事関係では四つ葉のクローバーや富士山など縁起物が好まれる。
「字を書くことに自信が無い人は、絵柄の大きな便箋を選びましょう」と文房具を製造・販売するデザインフィル(東京都渋谷区)の中村雅美さんはアドバイスする。
書くスペースが小さく、少ない文字数でも全体のバランスが保てる。さらにケイ線が引いてあれば、真っすぐ書きやすくて初心者向けだ。
文字は細く書くと自信が無いような印象につながる。親しい人に書く手紙なら、ペンは太字で、青や茶色など明るい色を選びたい。
インクがじんわり染みるタイプのボールペンや万年筆なら優しい雰囲気の文字が書ける。高級品でなくてよいので、お気に入りの一本を見つけると書く楽しみが増す。
切手やシール、スタンプなども明るい雰囲気を演出する。動物や花など相手が好きなシールを封筒や便箋に貼れば、喜んでもらえるだろう。
(武田健太郎)
[日経プラスワン2013年10月12日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。