利用者が急増 ベビーシッター日本に根付く?

「お隣のお子さんが保育園から普段見かけない女性と帰ってくるわ。聞いたらベビーシッターなんですって」。近所の主婦の話に、探偵の深津明日香は興味を持った。「日本には根付いていないと思っていたけど、最近増えているのかな」

赤字でも利用 共働き続行へ先行投資

明日香は早速、大手ベビーシッター会社に問い合わせた。ポピンズ(東京都渋谷区)社長の中村紀子さんは「病児保育も手掛けており、最近は共働き家庭の利用が増えています」という。全国の共働き世帯は1千万世帯以上に増えている。同社は6年前にサービスを値上げして1時間2300円としたが、この間に利用会員は35%増えたという。

「ベビーシッターといっても、12歳くらいまで需要があるんですよ」と話しかけてきたのは家事代行ベアーズ(同中央区)専務の高橋ゆきさん(44)。残業時や小学生の放課後の過ごし方など働く親の悩みは尽きない。同社の場合、毎回同じ担当者が、家事も引き受けるコースは1時間3465円。明日香が「私の時給より高い」と驚くと、高橋さんは「子育てに悩む母親の相談相手にもなり、子どもの対人関係を広げる効果も評価されていますよ」と笑った。

明日香は利用者にも話を聞こうと、8月に出産した辰巳真貴子さん(32)を訪ねた。来月、医師・研究職として復職するが「夏生まれは待機児童になりやすいんです。保育園に入れるまで保育ママとシッターでつなぎます」という。保育ママ(家庭的保育)とは市区町村が認定した保育者が自宅などで保育を請け負う地域の制度。辰巳さんの住む足立区では月額約2万円で平日は毎日8時間使える。

これに加えベビーシッターは通常1回2~3時間からの利用で1日5千円以上かかるが、「長期的なキャリアを考えれば短期的には赤字でも仕方ありません」と辰巳さん。国民生活白書によると、企業で働く大卒女性が出産時に退職すると、数年後に再就職しても、生涯賃金は数千万円減る。「失う額を考えればシッターの利用は先行投資として捉えられるのね」と明日香。

日本には“育児は母親”との価値観が根強く、母親自身も子どもを預けることに罪悪感を覚えやすい。ただ、「働く必要性が高いと、子どもがかわいそうとの意見は減る」という研究(首都大学東京の江原由美子教授)もあり、女性の世帯収入への貢献が増せば需要は増えそうだ。