パスタ・スープにも 和だしで味に深み、活用のコツ
パスタをゆでる際、鍋に昆布も入れる
都内に住む池田雅子さんは、パスタをゆでる際に和だしを使う。鍋にはパスタと一緒に昆布を入れる。出来上がりは塩だけでゆでたものに比べ、独特の深い味わいがある。昆布のだしが効いている証拠だ。
「昆布を身近に使える料理をと考えた」と話す池田さん。かつお節卸会社で働く傍ら、和だしを使う料理を考案。レシピ投稿サイト「クックパッド」やブログ「だしのある暮らし」で数年前から紹介してきた。最近は「20~30代の女性を中心に、注目度がグンと上がった」という。
昆布でゆでるパスタもそのひとつ。ゆでる時に昆布を加えるだけと簡単だ。ゆで汁はかき卵、だしを取った昆布はいため物の具にと、食材の無駄がないのも魅力だ。
池田さんは「手軽に和だしを使おうと工夫する中で洋風料理への活用法が増えた」と振り返る。パスタ以外にも、かつお節と昆布のだしのミネストローネや、干しシイタケを使うクリームスープなどが人気がある。
和だし活用料理を考案・紹介する動きは、プロの料理人の間にも広がっている。もともとフランス料理のシェフで、産業フードプロデューサーの中村新さんは、昆布やかつお節のだしを使うスープカレー、ポタージュなどのレシピを考えた。
「欧州修業時代、昆布などの使い方をよく聞かれ、実際に使う店も多かった。海外から見て和だしの活用範囲はとても広いと気付いた」と話す。今年、考案したレシピをまとめた「からだが喜ぶ和だしのスープ」(世界文化社)を出版し、女性を中心に人気を集める。
水に浸して作りだめ
中村さんが初心者に特にお勧めという料理が、マグカップに蒸したサツマイモ、牛乳、バター、塩などと昆布だしを入れ、電子レンジで温めるだけの簡単スープ。前夜に材料を切ってカップごと冷蔵庫に入れておけば、翌日温めるだけで朝食に1品加えられる。
「和だしが海外から注目される理由のひとつは、短時間で効率的に深い味を引き出せること。料理にあまり時間がとれない忙しい人ほど、実は活用余地が大きい」と中村さん。普段は料理をしない人でも、1度試してみる価値はありそうだ。
和だしを使う料理が多様になったのに伴い、だしの取り方にも変化がある。中村さんは「昔ながらの方法にこだわる必要はない」として手軽な新手法を提案する。
まず昆布なら水と一緒に麦茶などの容器に入れ、夏季は30分~2時間、冬季は3~4時間を目安に浸す方法だ。冷蔵庫に入れれば3日ほど保存できる。時間のある時に作りだめしておくと便利。容器はペットボトルを洗って代用してもいい。
急に使う必要がある時は電子レンジを使う。昆布と水を耐熱容器に入れてレンジで数分、加熱すればいい。「鍋で煮る昔ながらの方法もいいが、レンジでも良いだしは取れる。だしの特性が異なり、レンジの方がむしろおいしく感じる場合もある」(中村さん)
池田さんも簡単にだしを取る工夫を考案。例えば「軽く水洗いした干しシイタケをトマトジュースや豆乳につけておくだけで、うまみが強く出ただしになる」。
色々な取り方を一通り試した後は、それぞれのだしの使い分けを考えるといい。例えば「油を使うならインスタントの顆粒(かりゅう)だしの方が使いやすいこともある」(中村さん)。色々なだしの特性を見極めて、使い分けることがだし活用上級者への道だ。
(堀大介)
[日経プラスワン2013年10月5日付]
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