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賃料だけじゃない 本社移転、過去10年で最多のワケ

2013/8/27 日本経済新聞 プラスワン

 「なぜ最近、本社移転が増えたのでしょう」。章司の質問に須田さんは、「企業経営がスピード重視に変わってきたからかもしれません」と指摘した。章司は、キリンHDが傘下企業を同じビルに集約して情報交換を緊密にし、新たな商品開発に役立てようとしていることを思い出した。須田さんはさらに「証券街を訪ねると何かわかるかもしれませんよ」と助言した。

証券会社の街、日本橋兜町。1990年ごろ(写真上)にはひしめくようにあった看板が今では数えるばかりに(東京都中央区)

 章司はさっそく東京証券取引所(東京都中央区)のある日本橋兜町に向かった。「おかしいな。空きビルが目立つぞ」。東証の北側にはマンションも建設中だ。章司は首をひねって、近くの投資会社、十字屋ホールディングス(同)社長の安陽太郎さん(72)に話を聞いてみた。「兜町に残っている証券会社は、めっきり少なくなりました」

 安さんは廃業した地場証券の社長を長く務めた。1999年まで東証では「場立ち」と呼ばれる証券マンが注文をさばき、証券会社も兜町近辺に本社を構えていたという。「証券マンは喫茶店などで情報交換していたものです」

 ところが東証がシステム取引に移ると兜町の風景は一変。大手や中堅の証券会社は顧客開拓のため交通の便が良く、機関投資家の多い東京駅周辺などに移転。システム開発にかかわるIT(情報技術)企業が多い渋谷や六本木に本社を構えるインターネット証券などが増えた。安さんは「証券会社が生き残るため緊密に接触すべき相手が変わったのです。証券業界だけの現象ではないですよ」と話した。

 「そう言えば大阪には『薬の町』があると聞いたぞ」。大阪市中央区の道修町(どしょうまち)を訪ねると、くすりの道修町資料館の館長、深澤恒夫さんが古い地図を持ち出した。「昔に比べると、道修町に本社のある薬品会社は半減してしまいました」

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