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エコノ探偵団

高速取引が原因? 株の値動き、最近なぜ激しい

2013/8/6 日本経済新聞 プラスワン

 「最近、株価の動きが大きいが大丈夫かい?」。事務所に来ていた神田のご隠居、古石鉄之介が新聞を眺めながら聞いた。「株価は景気の先行きを映すと言われますし、背景を調べましょう」。探偵、松田章司が早速調査に乗り出した。

■異例の政策 市場手探り

 株価が急変したのは5月。日経平均株価は年初の1万600円台から約5千円上がっていたが、23日に中国の景気指標が悪くなったことをきっかけに前日比1143円も下げた。この日から1日の高値と安値の差が広がるようになり、翌日は1千円を超えた。その後も500円前後の幅で動く日が珍しくなくなった。

 「何が起きたんだろう」。章司はSMBC日興証券で株価などを分析するチーフクオンツアナリストの伊藤桂一さんを訪ねた。「株価急落は機関投資家が株への資産配分を見直したのが一因です」と伊藤さん。保険会社などの機関投資家は顧客から預かったお金を運用する際、お金全体に占める株や債券の比率をある程度決めて取引している。「株価の上昇で資産に占める株の比率が高くなりすぎたので調整したのです」。経済の実態が大きく変わったわけではないという。

 「でも急落後も不安定な動きが続いていますよ」。章司が重ねて聞くと、「株と為替が相互に影響し、相場の変動を増幅させている面があります。為替の運用担当者が株価を見て取引する傾向が強まっているのです」と伊藤さん。例えば、投資家が不安になって日本株を売る局面では、世界の投資家から低リスクの資産とみなされている円の需要が増える。円が買われて円高になると、輸出企業に不利になるとして日本株が売られる悪循環が起きやすい。

 次に訪ねた東短リサーチのチーフエコノミスト、加藤出さん(47)は「日米の中央銀行の政策が影響しています」と指摘した。米国では2008年のリーマン・ショック後、米連邦準備理事会(FRB)は景気対策のためお金の供給量を大幅に増やしている。「そのお金がところてんのように新興国にまで流れ出しています」。ところが5月、FRBのバーナンキ議長が金融緩和を縮小すると発言し始めた途端、米国の株価が大きく下がった。こうした動揺が日本市場にも波及した格好だ。

 日銀もデフレ脱却を目指し4月から大規模な金融緩和を始めた。「2年で物価上昇率を2%に上げると宣言しましたが、債券市場の参加者は効果を疑っています。目標達成のためさらに大規模な緩和に踏み出すのか、展開が予想できないのです」という。

 元日銀理事で、富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェローの早川英男さん(58)も金融政策の影響を指摘する。「一般に金融政策の転換点では不確実性が高まり市場の変動が大きくなります」。過去にも、1980年に金利の引き上げをきっかけに10年物国債が暴落した例がある。

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