がん組織のみ正確に照射 放射線治療、技術進歩機能や形を温存

がんの三大治療法のひとつ、放射線治療が注目されている。正常な組織を避けて、がんだけに強いエックス線を当てられるようになり、がんの種類によっては根治できる治療だからだ。コンピューターやロボットの技術の進歩で高精度な治療装置も普及してきた。放射線治療に関する正しい知識を持って、いざというときに治療の選択肢として考えたい。

「当初、放射線治療は難しいと聞いていた肺がんで治療ができた。副作用などの負担も少なく受けてよかった」。3月、都立駒込病院(東京・文京)で放射線治療を受けた田中康宏さん(仮名、55)はこう話す。田中さんは都内の会社に勤める。夕方になると倦怠(けんたい)感はあるものの、通常の業務をこなし、休日はゴルフを楽しむことも。約1年前には勤務を続けながら通院し、もうひとつあった別のがんの放射線治療も経験している。

田中さんは2種類の最新の放射線治療を受けた。最近の例は呼吸などで動く臓器のがんをリアルタイムで追尾して放射線を正確に当てる治療だ。「肺や肝臓など呼吸で動く臓器のがんをいかに正確にとらえて照射するかが、放射線治療の大きな課題のひとつだった」と治療に当たった唐沢克之・放射線診療科部長は話す。

■手術と同等の成績

従来は場所によっては数センチメートル動くことを見越して照射範囲を広くとるのが普通だった。がん以外の正常な組織にも放射線が当たるため、がんに十分な線量を照射しにくく効果も低くなっていた。

もうひとつは、トモセラピーという装置で放射線の強度をコンピューターで制御する強度変調放射線治療(IMRT)。1本の放射線ビームの中に放射線の線量の高い部分と低い部分を作り、多方向から当てる。がんの形に合わせて照射できるのが特徴だ。骨盤の内側など臓器がたくさんあり、がん以外の正常な組織への照射をできるだけ減らすときに威力を発揮する。いずれもがんだけに十分な量の放射線を集中的に照射する方法で「放射線治療で十分な効果が出るがんが増えた」(唐沢部長)。国内で新型の装置を導入する医療機関が急増している。

がんを追尾しながら集中的に照射する最新の放射線治療装置(京都大学・平岡真寛教授提供)

6月下旬には京都大学病院で、呼吸で動くがんを追尾し、集中照射するIMRTを組み合わせた新しい治療も始まった。60代男性の膵(すい)がん患者で実施、従来の放射線治療に比べて正常組織に放射線が当たる量は胃で4割弱、十二指腸で約2割減った。

三菱重工業と動くがんの追尾治療装置を開発し、新装置の開発も進めている京大の平岡真寛教授は「これまで治療しにくかった難治性のがんにも放射線を十分照射できるようになり、抗がん剤や手術と組み合わせて根治を目指せる」と指摘する。

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