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エコノ探偵団

伊勢エビの駅長も マスコット動物なぜ増える?

2013/7/30 日本経済新聞 プラスワン

 「夏休みの旅行でネコの駅長に会って驚いたわ」。カフェで友人の女性会社員から情報を得た探偵、深津明日香はピンときた。「動物がいる飲食店も目立つ。看板娘はみかけないのに『看板動物』が広がるのはなぜかしら」。調査を始めた。

■少子高齢社会に癒やし

 明日香は友人が訪ねた和歌山電鉄の貴志駅に急いだ。改札を出て右手にあるガラスの仕切りの向こう側で三毛猫が寝ている。「彼女が駅長の『たま』です」。社長の小嶋光信さん(68)が紹介した。「乗客を増やし社名を広めてくれた功績に報い、2013年1月には私に次ぐナンバー2の社長代理に昇格しました」

 貴志駅の近くで飼われていたたまは07年1月、駅長に就任。すぐ話題になり、同駅と和歌山駅を結ぶ貴志川線の乗客は増えた。06年度のたま駅長の勤務は3カ月だけだったが、利用客数は前年度を1割上回る211万人に達した。それから12年度まで7年連続で210万人の大台を続けた。関西大学教授の宮本勝浩さん(68)らは、グッズ販売なども含め、たま駅長の就任から1年間の経済波及効果を約11億円と推計する。

 「ほかのネコとどこが違うのかしら」。首をかしげる明日香を東京からやってきた独身の女性会社員(35)がたしなめた。「人間ならば70歳くらいのおばあさんネコに失礼ですね。見ているだけで癒やされますよ」。平日の昼間なのに観光客が絶えない。妻子と一緒に寄った台湾の男性(35)は「インターネットでたまの動画をみた友人が薦めてくれたのです」と明かした。

 明日香は感心した。「ネットを通じ海外でも有名ね」

 たまの成功をみて、各地で動物の駅長が誕生した。会津鉄道の芦ノ牧温泉駅の名誉駅長はネコの「ばす」。山形鉄道の宮内駅の駅長「もっちぃ」は白いウサギ。いずれもたまと同様に写真集が出版された人気者だ。それぞれが鉄道の収益に貢献している。

 「動物がいるレストランはどこだっけ」。明日香は東京都渋谷区の「桜丘カフェ」を探した。歩道に面した店の小屋には白と黒のヤギが1頭ずつ。「白が『さくら』、黒は『ショコラ』。集客力は抜群です」。運営会社の社長、大谷秀政さん(45)が説明した。

 10年5月に飼い始めてから土日の客数が平日を上回るようになり、月平均の売り上げが約200万円増えた。多くの通行人が足を止め、ヤギに近づく。大谷さんは「家族旅行で台湾の“猫カフェ”に行き、小さな娘が喜ぶ様子をみて、動物の癒やしの効果に気づきました」と明かした。

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