2013/8/13

エコノ探偵団

「視野を世界に広げ、大きく羽ばたく起業家を応援しています」。「HUB Tokyo」(ハブ東京、東京都目黒区)社長の槌屋詩野さん(34)はこう話す。英国で、発展途上国の起業家と日本企業との橋渡しをしていた槌屋さんは、世界約30都市で起業家を支援する「HUB」の活動を日本にも広げようと12年春、会社を立ち上げた。作業空間を貸したり、事業を軌道に乗せるために助言したりする。「将来性がある起業家に資金を提供したい投資家はたくさんいます」

明日香は専門家の意見を聞くため、専修大学ソーシャル・ビジネス・アカデミー(大学院)校長で同大学教授の徳田賢二さん(65)の元に出向いた。「若者が起業するハードルが下がっているんです」。起業したい人が集まる交流サイト(SNS)、安価な貸しスペースの普及、資本力よりもアイデアや熱意が問われるサービス分野の広がり――。若者に有利な環境が整ってきたと徳田さん。「私の講座に通う学生の約2割が将来の起業を希望しています。若者の起業は急増しそうです」

総務省の07年の調査では、日本で起業を希望する人(約100万人)のうち30代が3割弱、30歳未満が約2割。余地は大きい。

「地道に努力する人もいいけど、もっと野心を前面に出す人はいないかしら」。明日香が再度調査を始めると、JX通信社(東京都中央区)社長の米重克洋さん(24)に出会った。

米重さんは大学に籍を置きながら、19歳で起業した。3人でスタートし、14人に増えた従業員の平均年齢は22歳。ソーシャルメディアの活用支援、ニュース検索などを軸に成長を目指す。「IT業界には目標にできる企業があり、励みになります。会社をどんどん大きくして3~4年の間に株式公開するつもりです」と目線は高い。ただ、日本をけん引する若者の起業はまだ限られているのが現実だ。

最後に中堅・ベンチャー企業の支援に10年以上携わる日本総合研究所・主席研究員の手塚貞治さん(44)に意見を求めた。「日本経済が、失われた20年と呼ばれた低迷期に育った若者たちは幻想を抱かない傾向が強いので、身の丈に合う合理的な計画を立て、たんたんと起業するのです。身の丈起業だけでは日本経済は活性化しません。若者にはもっと大きな夢を持ってほしいですね」

すべての報告を終えると所長は「数年後に今回の若者起業家たちを追跡調査しよう」と切り出した。明日香は小声で一言。「私も独立を考えてるんだけど」

(編集委員 前田裕之)

[日経プラスワン2013年8月10日付]

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