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「〈遊ぶ〉シュル レアリスム」展 多様な手法、本質クリアに

2013/7/30 日本経済新聞 朝刊

1920年代にフランスのパリで始まったシュルレアリスムは半世紀近く続いた息の長い芸術運動。作家の手法も様々でとてもひとくくりにはできない多様さがある。

東京・新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「〈遊ぶ〉シュルレアリスム展」は、その運動を「遊び」をキーワードに読み解く意欲的な試み。年代ごとに変遷をたどるかわりに「コラージュ」「オブジェと言葉遊び」といった切り口で整理すると、本質がクリアに見えることに驚く。

たとえば、紙に絵の具を押しつけて偶然できた形や質感を作品に生かすデカルコマニーは、芸術家が意図した通りに作品をつくるのではなく、偶然を取り入れた視覚のおもしろさを楽しむ手法。一見、子供の遊びのようでいて、常識や理性に頼らない自由な創作への意志がすがすがしい。

服飾を学ぶ女学生だった岡上淑子のコラージュも、本展監修者で仏文学者の巖谷國士氏によって今回初めてシュルレアリストの系譜にきちんと位置付けられた。結婚するまでのわずか6年間だけ雑誌の切り抜きで夢幻の世界を作り上げた異色の作家。シュルレアリスムは子供の絵などアマチュアの創作を「専門性」で切り捨てなかったと巖谷氏が指摘するように、この運動の懐の深さも展示から浮かび上がる。

シュルレアリスムは第1次大戦を体験した若者たちが「科学技術の発展や理性による調和」という近代主義の価値観に疑問を抱いたことから始まる。新しいものの見方が切実に求められた時代の産物だったのだ。「遊び」に着目した企画意図は、実はいまの時代と深く関わっている。8月25日まで。

(文化部 窪田直子)

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