自宅で作家気分 手作り品、サイトのお店で販売
自作の服やアクセサリーなどをインターネットで売る女性が増えている。手作り品の売買専門サイトが次々と立ち上がっており、出品しやすくなっているためだ。自宅で作家気分を味わいながら収入も期待できる、そんな専門サイトの上手な使い方を探った。
気配りで客の心つかむ
「子どもとの時間を減らすことなく、好きな作業でお金を稼げる」。横浜市の主婦、島田八恵さん(36)は自作の子ども服や雑貨を前に話す。6年ほど前、第1子誕生を機に服などを作り始めた。まず友人に贈り、昨年からは手作り品専門の売買サイト「iichi」で「8e」という名前で販売を始めた。
博報堂の子会社iichi(神奈川県鎌倉市)が運営する同サイト、利用は簡単だ。名前や住所を登録後、作品の写真を撮り、価格を決めて公開すれば、自分の作品の仮想店舗ができる。あとは注文を待つだけだ。島田さんは現在1カ月に約30品、4万~5万円を同サイトで売り上げている。
こうした手作り品専門の売買サイトが増えている。2011年開始のiichiには約6000人の作家が登録中だ。今春には東急ハンズとNTTドコモも参入し、それぞれ約1000人の作家が参加する。作品は雑貨やアクセサリー、食器など様々だが、作家の多くが女性で全体の8割近くを占めるサイトもある。
フリーマーケットやネットオークションは売れなくても利用料が必要な例が多いが、手作り品専門サイトは売れたときだけ手数料を払う方式が主流だ。サイト運営会社が代金を預かった後に作品を発送する仕組みなので、金銭トラブルも発生しにくい。島田さんは「費用負担やリスクがないので挑戦できた」と語る。
ただし、成約にこぎ着けるにはコツがある。まず出品の可否を把握すること。見落としやすいのは著作権などを侵害する作品の規制だ。NTTドコモは「例えば、有名キャラクターをあしらった服や雑貨は自分用はOKでも、他人に販売できない場合がある」とする。事前に各サイトで出品禁止物は調べておきたい。
もう一つ、注意したいのは作品の写真だ。iichiによれば「アップの撮影に凝る人が多いが、実物の大きさがわかる写真が実は大切」。バッグや首飾りは大きさが分からない品を敬遠する客が多く、「マネキンなどと合わせた写真を1枚加えるだけで買い手の反応は変わる」という。
包装にも気を配りたい。島田さんは「作品に合わせたラッピングを喜んでくれる客が多い」と話す。何度も注文してくれる得意客を獲得するには、作品以外の部分にも細かい気配りが欠かせない。
現実売り場にお誘いも
手作り品の売買サイトで注目を集めれば、現実の世界に作品公開の場が広がることもある。
「ネットで作品を公開した後、様々な展示会の誘いが来た」と話すのは、NTTドコモの「dクリエイターズ」を使う横浜市の功刀(くぬぎ)悠花さん(26)。自宅で手足などが生えた独特の陶器を作り、「くぬぎ」という名で売る。平日は陶芸と関係ない企業で働くが、ネットを介して「作品を世に出す機会が増えた」。
iichiで、「ナミキミオ」の名で自作ジュエリーを売る並木美緒さん(30)の場合は「サイトを見たセレクトショップから卸売りを求められたことがある」。
一方、東急ハンズは渋谷店と熊本店に個人の手作り品を扱うスペースがあり、売買サイトを使う作家には今後スペースの活用を働き掛ける。
外部から声がかかる作家になるには、どうすればいいか。東急ハンズは「最低でも1~2カ月に1度は新作を出していれば、やる気があると見られる」とする。個々の作品の質を高めることも大切だが、数をこなす体力と気力のアピールも重要だ。
(堀大介)
[日経プラスワン2013年7月13日付]
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