便利で安全 パスワード、専用サービスで一括管理
暗号化や自動入力機能も
「突然、知人のアドレスから英語のメールが来てビックリした」と話すのは会社員の太田麻未さん(26)。数カ月前、迷惑メールと思われるものを受信した。送信元の知人に尋ねたが送った覚えはないという。「知人は不正アクセスに遭い、メールを乗っ取られたらしい。怖いと思った」
暗号化、高い安全性
太田さんはそれまで文字列を少しずつ変えて複数のパスワードを作っており「何かのきっかけでパスワードがすべて推測されるのでは」と不安を覚えたという。ネット上で必要以上の個人情報は登録しないなど危機意識はあったが、パスワード管理は「正直面倒だと思っていた」。
現在太田さんが自宅のパソコンで使っているのは、ソースネクストのソフトウエア「マカセルパスワード管理」だ。ウェブサイトに登録したパスワードを暗号化し、ソフトで一括管理。一度登録したサイトに再び接続するとパスワードなどを自動で入力できる。英数字など指定した種類からランダムな文字列を生成する機能もあり、安全性が高い、複雑なパスワードを使いやすくする。
トレンドマイクロの「パスワードマネージャー」も同様にパスワードの生成や、ウェブサイトでの自動入力機能を持つ。登録した情報は同社のクラウド上で管理するため、パソコンで入力したパスワードをスマートフォン(スマホ)やタブレット(多機能携帯端末)からも使えるのが特徴だ。名前や住所を登録しておけば個人情報フォームへの自動入力もできる。
クラウド上に個人情報を預けることに不安がある人もいるかもしれない。その点、同社は「情報セキュリティーの会社が管理するうえ、暗号化して漏洩を防いでいる」としている。
スマホからウェブサイトに訪れる頻度が高いなら、スマホ向けアプリが便利だ。カナダを本拠地にするアジャイルビッツの「1Password」、日本システムウエアの「パスメモ」などがある。前者はアップルの「アイフォーン」などのiOS、後者はアンドロイド端末で使えるアプリ。IDやパスワードを登録しておけば、ウェブサイトでログインを求められた際にアプリの画面を呼び出し、数回タッチすることで自動入力できる。
ソフトウエアやアプリが煩わしければ、キングジムの小型情報端末「ミルパス」がある。手のひらサイズの端末にパスワードなどを最大200件まで登録でき、必要なときにタッチペン操作で表示する。万一紛失した場合もミルパスのパスワードを知らない人は中身を見られない。誤入力が続くとデータを消去する設定もできる。
管理パスワード1つ
いずれのサービスでも「パスワードを管理するためのパスワード」を1つ自分で考え、覚えておく必要がある。生年月日などは容易に推測されるため避け、記憶できる範囲で長く、複雑なパスワードにしたい。数字の0(ゼロ)をアルファベットのo(オー)に置き換えるなど自分なりのルールで文字列を作る方法もある。
トレンドマイクロの調査によると、ログインが必要なウェブサイトは1人平均で約14種類に上る。一方、7割のユーザーが3種類以下のパスワードを使い回すなど「セキュリティー上のリスクがある」とする。パスワードが見破られ、登録情報がいったん流出してしまうと、自分だけでなく家族や知人、勤務先などにも被害をもたらす可能性がある。できる限り防衛策を取り、セキュリティーと便利さを両立させたい。
(メディア開発部 諸富聡)
[日本経済新聞夕刊2013年7月4日付]
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