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「エミール・クラウスとベルギーの印象派」展 もう一つの印象派に光

2013/6/28 日本経済新聞 朝刊

「昼休み」と題された1枚の絵。スカートの裾をたくし上げた後ろ姿の女性が草を踏み分け、仲間の元へ向かう。畑でひと仕事を終えた後なのだろう。心地よい充足感が伝わるすがすがしい絵だが、これが「印象派」の作品と聞けばとまどう人もいるかもしれない。

東京ステーションギャラリーで開催中の「エミール・クラウスとベルギーの印象派」展は画家エミール・クラウス(1849~1924)を中心に据え、同国の印象派の流れを紹介する珍しい展覧会だ。

クラウスや彼の周辺で活動した画家たちの画風は後に「ルミニスム(光輝主義)」と呼ばれるようになった。そのことからも分かるように、いわゆる「印象派」のイメージに収まりきらず、多種多様な要素がブレンドされていることが分かる。

クラウスは1900年ごろの欧州で高い評価を受けたスター画家だったという。緑あふれる田園地帯に暮らしながら描いた絵は、バルビゾン派のミレーなどに通じる素朴さがあって親しみが持てる。けれどもそれが古くさく見えないのは風景を逆光でとらえ、光の効果を存分に生かしているからなのだろう。

ベルギーには1880年代後半、印象派と新印象派がほぼ同時に紹介されたが、クラウスは目新しさに飛びつくことなく、そのエッセンスを自らの絵に消化していった。そのバランス感覚こそが当時の人気の秘密だったのかもしれない。

クラウスに直接師事した2人の日本人画家、児島虎次郎と太田喜二郎を取り上げた最終章も本展の見どころ。本家フランスだけでなく、ベルギーを通じて日本にもたらされたもう一つの「印象派」に光を当てている。7月15日まで。石川、愛知に巡回。

(文化部 窪田直子)

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