ライフコラム

エコノ探偵団

広がる最低価格保証 値下げ競争抑える狙いも?

2013/6/25 日本経済新聞 プラスワン

家族と京都旅行を楽しんだ近所の主婦が事務所に土産を持ってきた。「最低価格保証のサービスで安く泊まれたから」と聞き、探偵の松田章司は驚いた。「もはや家電量販店だけのサービスではないのか。狙いは何だろう」。調査を始めた。

■「この店で買う」 決断促す

章司は主婦が利用した旅行予約のウェブサイト、エクスペディアの日本版を開いてみた。「『国内・海外ホテルすべて! 最低価格保証』と書かれている」。サイトを運用するエーエーイージャパン(東京都港区)の代表取締役、三島健さん(40)が説明した。「海外ホテルで先行して導入し、この4月には国内宿泊施設を対象に加えました」

顧客の“通報”を受けて調べ、部屋や食事の内容など宿泊条件が同じ場合、ほかのサイトの方が安ければ差額を返金する。海外のホテルやツアーに使える5千円分のクーポンも渡す。国内のホテルや旅館に関してはこれまでに顧客の数%が「ほかの方が安い」と申請、この半数ほどが実際に返金を受けたようだ。

章司は尋ねた。「狙いは何ですか」。三島さんはPR効果を口にした。「お金を返したらその分は損ですが、安さを打ち出して多くの人に試してほしいのです」。保証を国内宿泊に広げたことで、顧客が2、3割増えたそうだ。

中部や西日本を中心に家電量販店を展開するエディオンは今年4月、インターネット通販に限って最低価格保証を始めた。ヤマダ電機、ビックカメラなど競合5社の通販サイトよりも高い商品があると顧客の指摘を受け、確認できれば自社サイトの価格を引き下げる。店舗の少ない地域で売り上げを伸ばすためだ。4~5月のネットでの販売額は前年同期の3倍に膨らんだ。

事業開発本部の武政良治さん(51)は「手応えを感じています」と語り、値下げによる損失を気にする風はない。

最安値を保証する大塚家具の有明本社ショールーム(東京都江東区)

「集客効果は大きいようだな」。章司は東京都江東区の大塚家具を訪ねた。「最安値保証」の看板が目立つ。男性会社員(32)は「高価な家具を買う際には色々な店を見てまわって検討するけど、ここが一番安いとわかれば安心して買えますね」と話した。

「どこで買うか迷う消費者に決断を促すのか」。うなずく章司に、流通論が専門の早稲田大学教授、野口智雄さん(56)がささやいた。「『小売の輪』も忘れないで」。「なんですか、それ」。「『市場に新規参入する会社はたいてい、低価格を武器にする』という経営学の理論です。大手に挑むエクスペディアなどが該当するでしょう」

「そういえば」。章司は12年7月に国内便が就航した日本航空系の格安航空会社(LCC)、ジェットスター・ジャパンを思い出した。当初から最低価格保証が売り物。同一時間帯に同じルートを飛ぶ他社便の運賃の方が安ければ、これを10%下回る運賃で乗れるバウチャーを提供。国内便の利用率はジェットスターがおおむね70~80%で、同時期に就航したLCC3社のなかでも堅調な水準だ。

「結局は“安さ”を強調する手段か」。章司はスーパー大手、西友を訪問した。同社は08年、米小売大手ウォルマート・ストアーズの完全子会社として生まれ変わった事実上の新規参入企業。同年12月に一部商品を除く最低価格保証を始めた。買い物客に対する調査で西友の「価格の安さ」を認めた人の割合は保証前の08年10月に52%だったが、13年5月には87%に達した。

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