一昨年の東京電力福島第1原子力発電所事故以降、電気をなるべく使わずジェルなどで体を冷やす寝具に人気が集まっている。体温は一日の中でも変動しており、下がるときが寝付きやすい。ジェルで寝入りの30分ほど冷やすと効果があるという。ただ、首から下を冷やし過ぎると血液の流れが悪くなることがある。頭部を気持ちのよい範囲で冷やす程度にとどめたい。

環境や寝具を整えた後は体の状態にも目を向けよう。まずは風呂。夏でもシャワーで済まさずに湯船につかることを心がける。入浴後に体温が下がるときが寝付きやすいからだ。38~40度のぬるめの湯で半身浴などをして2~3時間後に寝るとよいという。熱い風呂を好む人は、少し早めの時間に入る工夫などをしよう。

就寝時間をずらす

寝る時間帯にも注意したい。いつも寝ている時間の2~3時間前は寝付きにくい。「なかなか眠れない」という人は、就寝時間を少し遅くしてみるのもよいという。また、日中から家でごろごろするのは避ける。

最近は睡眠の質を家庭で測る装置も市販されている。例えば、タニタの「睡眠計スリープスキャン」は布団の下にシート状のセンサーをひき、振動から呼吸などを計測。睡眠の深さを4段階で把握して毎日記録する。これをもとに改善点を示す機能がある。医師が睡眠障害などの診断に使用する「終夜睡眠ポリグラフ検査」を参考に開発した装置で、現状では睡眠の傾向が約7割の一致率で把握できるという。

寝具や環境などを整えても熟睡できない場合は、不眠症の可能性がある。高齢者の約3分の1が不眠に悩んでいるといわれている。睡眠総合ケアクリニック代々木(東京・渋谷)の井上雄一理事長は「60歳以上では朝の目覚めが早すぎるタイプと途中で起きてしまうタイプが多い」と指摘する。慢性の不眠症になると、寝床にいること自体が目を覚ます要因になってしまう。

井上理事長によると「快眠グッズは個人差が大きく、不眠症には必ずしも有効ではない」という。いろいろ工夫してもよく眠れないときは一度、医療機関を受診するとよいだろう。

(松田省吾)

<ひとくちガイド>
《インターネット》
◆よく眠るための寝具の条件などを知るには
 厚生労働省「e-ヘルスネット 健やかな睡眠と休養」(http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01.html)
《本》
◆不眠症について解説
 「認知行動療法で改善する不眠症」(岡島義・井上雄一著、すばる舎)

[日本経済新聞朝刊2013年6月16日付]